コロナ禍で一時1万6000円台まで急落した東京市場の株価(日経平均)は持ち直し、急落前の2万3000円水準を回復、未曽有の企業収益悪化や突然の首相辞任表明も影響は限定的で底堅く推移している。[br] 主要国の株価も、深刻な景気後退が続く中で、立ち直りを見せる。中でも世界の指標となる米国株式市場は過熱気味ともいえる活況が続く。株価は景気の反映とも言われているのに、なぜなのか。[br] 世界で株価が回復した共通の要因は、売られ過ぎの反動と感染終息後の経済回復期待や、IT関連企業の成長評価などが挙げられよう。しかし、コロナ禍支援の財政出動や金融緩和による過剰マネーが要因との見方が市場で支配的だ。株価が実体経済から懸け離れて過大評価されれば、ささいなきっかけで過剰反応し急落しやすくなる。日本市場もこの先、波乱含みのリスクが増す。警戒が必要だ。[br] コロナ禍前には2万3000円近辺だった株価は、感染が拡大した2月末から急降下。しかし3月下旬に1万6000円台を付けた後、米国市場が、量的緩和やゼロ金利復活を好感し急反発。日本も協調緩和をきっかけに、6月にはコロナ禍以前の水準を回復した。感染拡大で4~6月期の国内総生産(GDP)が大幅に落ち込み、同期の企業収益が半減しても、2万3000円前後を維持する。[br] 株価を左右する投資家別の売買動向は、市場調査などによると底値圏で年金資金による買い出動や日銀による上場投資信託(ETF)購入増加があり、売りの主役だった外国人投資家も買い方に回り急上昇。株価が2万円を超えて買い安心感が広がると、個人投資家が参加しているのがうかがわれる。[br] ワクチンが認可されれば、低迷している消費や経済活動も元に戻るとの期待感が、現在の相場を支えている。加えて、自粛中でも収益が伸びたネット関連などITを活用した非接触型ビジネスの将来性を見込んで個別に買われている。[br] ただ相場全体を見れば過熱感が増しているのも事実だ。健全な株価水準の目安として、株式市場の時価総額をGDPで割って算定するバフェット指標がある。これが100%超だと割高とされ、株価調整につながりかねない。最近では、日本が120%。米国は180%を付けることもある。高値圏での踊り場にある現状で、過熱感を増す米国市場が崩れたり、コロナ感染が深刻化したりすれば、二番底に向かう懸念もあるだろう。