時評(8月14日)

財政健全化へ政権の本気度がうかがえない。いつまで改革から逃げ続けるつもりなのか。 内閣府は、財政再建の目標として掲げている国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)について、最新の試算をまとめた。政府は2025年度にPBを黒字化.....
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 財政健全化へ政権の本気度がうかがえない。いつまで改革から逃げ続けるつもりなのか。[br] 内閣府は、財政再建の目標として掲げている国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)について、最新の試算をまとめた。政府は2025年度にPBを黒字化する目標を掲げ続けているが、試算では7兆3千億円の赤字が残り、黒字化の実現は29年度まで遅れる。[br] しかもこの試算は、国内総生産(GDP)成長率を、政府が7月に閣議決定した「骨太方針」を着実に実行することで目標としている「実質2%程度、名目3%程度」という高い水準を前提としている。成長率を現状と同水準の「実質1%程度、名目1%台前半程度」で推移するとして試算すると、25年度は12兆6千億円、29年度でも10兆3千億円のPB赤字が残る。[br] PBは、過度の国債発行といった借金に頼らずに税収などの歳入によって政策的経費を賄うことを示す指標である。現役世代には、今ある財政赤字のつけ払いを軽減させて次世代に引き継ぐ責任がある。財政健全化は、当然の政治課題だ。[br] 政府は「成長なくして財政再建なし」の立場を貫き、アベノミクスの推進で税収の増加を図り、消費税率引き上げ効果と併せて歳入確保を図る政策を進めてきた。だが、戦後最長を更新するとされてきた景気拡大期間は18年10月までの71カ月で終わっていた。しかも日本経済の潜在成長率は1%を下回る水準という低さのままだ。[br] PBの大幅赤字をもたらしている国と地方の長期債務残高は、20年度末で、2次補正分を合わせて1182兆円と、GDPの2倍に達する。[br] 新型コロナウイルス感染拡大で日本経済が未曽有の打撃を受けGDPが落ち込み、一方で経済対策として補正予算を組み赤字国債を増発することが要因だ。20年度の一般会計予算は160兆円規模に膨らみ、新規国債発行額は90兆円を超える。[br] 国民生活を守る緊急措置で国債発行が膨らむことは理解できる。だからと言って、財政再建への取り組みをなおざりにしてはならない。政府は21年度予算の概算要求方針として、コロナ対策など「緊要な経費」は必要な要求ができるとしているが、コロナ対策を口実に野放図な歳出膨張があってはならない。[br] 受益と負担の在り方や税制の見直しなど、歳出と歳入構造の改革に真剣に取り組むべきだ。孫や子の代に対して財政再建への道筋を示していくことが、政治の責任だ。