立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党の臨時国会召集の要求に対し政府、与党は早期の召集は拒否した。新型コロナウイルス感染の再拡大などを巡り加藤勝信厚生労働相、西村康稔経済再生担当相が出席し閉会中審査を実施することになった。[br] 9月には衆院予算委員会を開くとしているが、安倍晋三首相の出席は未定。国民の不安解消に向けては首相のリーダーシップを示すことが不可欠だ。首相による早い段階での説明が望まれる。[br] 新型コロナの政府対応に国民は混乱するばかりだ。お盆の帰省について、西村氏が「慎重に考えるべきだ」と述べたのに対し、菅義偉官房長官は自粛を否定し閣内の足並みの乱れを露呈させた。[br] 観光支援の「Go To トラベル」は感染拡大が懸念される中、東京だけを除外して強行。介護施設などに7月末から8千万枚の布マスクを配布する計画は「不足は解消された」との野党の批判を受け、配布対象を希望する施設に限定すると変更された。[br] ちぐはぐな対応が、国民の政府への疑問あるいは不信感を呼んでいるのは間違いない。個々の閣僚の発言でなく、関係閣僚が顔をそろえた国会の場での統一性ある丁寧な答弁で国民を納得させる必要がある。[br] 公明党の山口那津男代表は「状況によっては安倍首相が直接、国民に説明する機会があってもいい」と指摘している。当然の判断だ。[br] 首相は国会召集について「諸課題を整理した上で、与党としっかりと相談をして対応する」と繰り返すが、例えば新型コロナ特別措置法改正といった具体的な課題は視野に入っている。[br] 政府は既に改正案の論点整理を始めているが、菅氏はテレビ番組で、感染拡大防止に向けた店舗などの休業に伴う補償を可能にする改正に言及した。国会で与野党の実務者による改正案の検討が始められてもいい。[br] 菅氏はまた、記者会見で「Go To トラベル」について「全国の観光業関連の約900万人が瀕死(ひんし)の状態の中で、悩みながら進めている」と述べている。常々首相が唱える「感染拡大防止と社会経済活動の両立」の難しさをしのばせる発言だ。経済、感染症の専門家の国会出席を求め、意見を述べてもらうことも国民の理解につながる。[br] 国会議員による国会召集の要求は憲法の規定に基づく重みを持つ。危機に対する機敏な対応を可能にするためにも、国会召集を急ぐべきだ。