東京と首都圏、大阪や名古屋といった大都市部を中心に新型コロナウイルスの感染者数が急激に増加し、国民の不安が高まる中、安倍晋三首相の存在感が希薄だ。[br] 政府は先週からの4連休に合わせて観光支援事業「Go To トラベル」を実施した。しかし、準備不足の露呈に加え、急きょ東京を対象外にしたことで観光事業者と利用者の双方に困惑と不安が広がった。[br] 感染者数が再び増加に転じたこの時期に1兆3500億円も投じ、しかも東京を外してまで実施を強行する意味はあったのか。各種世論調査の結果をみても、圧倒的多数の国民は強い疑問と違和感を抱いている。[br] 国が非常事態に直面した場合、難局を乗り切るために政府が適切な解決策を具体的に提示し、国民に対して、時には痛みを伴う協力を要請することが為政者には求められる。それが指導者に課せられた説明責任であり、そのことを果たすのがリーダーシップだろう。[br] では、安倍首相はコロナ対応で説明責任を果たして指導力を発揮してきたのだろうか。首相主導の具体的措置としては、3月2日からの全国の小中高校、特別支援学校の一斉休校がまず挙げられる。効果については、専門家の見方も分かれており、今後の検証が必要だろう。[br] 緊急事態宣言はどうか。首相は宣言発出の際に国民に対して人と人との接触を7~8割削減するよう要請。国民もおおむねこれに応えて、感染者数は低下し、宣言解除につながった。[br] 首相は「わずか1カ月半で流行をほぼ収束させることができた」と胸を張り、経済活動再開へ大きくかじを切った。一方で通常国会閉幕後の先月18日を最後に記者会見を開かず、国会の閉会中審査にも出席していない。時折、首相官邸でごく短時間、記者団の取材に応じるだけだ。[br] 河井克行前法相と妻の案里参院議員の公選法違反事件について追及されるのを嫌って記者会見や国会出席を避けているのか。だとしたら、首相として一国を率いる資格はない。[br] コロナ対応に関する安倍首相をはじめ政府の説明に多くの国民が不信感を抱いているのは世論調査からも明らかだ。[br] 医療体制は本当に大丈夫なのか。再度の緊急事態宣言の可能性はあるのか。政府が描く収束への具体的な道筋はどのようなものか。その見通しは。首相に聞きたいことは山ほどある。[br] 説明責任を果たせないようでは安倍首相に指導者としての資質はない。