八戸港で中型イカ釣り船が北太平洋の公海で漁獲したアカイカの水揚げが本格化している。漁模様は総じて好調とみられ、同港全体の水揚げ数量が落ち込む中、水産関係者の注目度は高い。ただ、知名度はスルメイカに及ばず、利用促進が課題だ。資源確保に向けた国際的な議論も不可欠といえよう。[br] 中型船の春夏漁(5~9月)は例年、1回目が北太平洋のアカイカ、2回目は日本海のスルメイカが主流だった。しかし、昨年は長引くスルメの不漁を背景に、大半が異例の北太平洋2航海に臨み、水揚げも7100トンと一昨年の4千トンから大きく伸ばした。[br] アカイカはスルメより大型で身が柔らかく、熱を加えても硬くなりにくい。主に加工原料として使われ、近年はすしねたや刺し身用などにも広がりを見せる。水揚げでは「耳取り」(胴体)「足」「軟骨」といった部位ごとの船凍品として取り扱われ、昨年から新たに、これまで未活用だった「触腕」の製品化を目指す動きも出ている。[br] とはいえ、現状ではスルメほど普及しておらず、国内の水揚げの大半が同港という利点を生かし切れていない感もある。スルメの「代替品」から一歩踏み出し、「イカの町・八戸」に新たな魅力を加える存在に成長するよう期待したい。[br] 太平洋全域に広く分布しているアカイカは、日本沿岸のみに生息しているスルメより資源量が安定しているようだ。だが、楽観はできない。[br] 系群は海域の中央部に生息する「秋生まれ群」と、西側の日本近くまで回遊する「冬春生まれ群」に大別される。秋生まれ群が安定する一方、冬春生まれ群は漁獲量が10年間で5分の1に減少するなど厳しい状況だ。[br] イカ類は寿命が1年のため資源状況は産卵、ふ化時期などの海洋環境に大きく左右されると。とはいえ、それは漁獲とも無縁ではあるまい。特に、日本船に比べ中国船などの漁獲量は圧倒的に多いだけに、影響もより大きいはずだ。[br] アカイカは日本、中国、韓国、台湾など8カ国・地域が加盟する水産資源保護の国際機関、北太平洋漁業委員会(NPFC)の管理対象種だ。現場の漁業者からは外国船の無謀とも思える振る舞いに困惑している声が少なからず出ている。[br] 関係各国は資源が安定している今のうちから同じテーブルに着き、将来にわたり持続的な漁を行うための基準づくりを議論すべきではないか。競合より共存の道を模索してほしい。