時評(7月4日)

プーチン大統領(67)の長期続投に道を開くロシアの憲法改正を巡る全国投票で、圧倒的多数が承認する結果が出た。中央選管の暫定集計では賛成が8割近くに達し、過半数を必要とする要件を満たした。 プーチン氏は2024年に任期切れを迎えるが、憲法改正.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 プーチン大統領(67)の長期続投に道を開くロシアの憲法改正を巡る全国投票で、圧倒的多数が承認する結果が出た。中央選管の暫定集計では賛成が8割近くに達し、過半数を必要とする要件を満たした。[br] プーチン氏は2024年に任期切れを迎えるが、憲法改正でこれまでの任期をゼロにリセットする条項が盛り込まれたため、本人が望めばさらに36年まで2期12年指導者にとどまることが可能になった。[br] プーチン氏の続投については、独立系調査機関レバダ・センターの3月の調査で「望まない」とする回答が40%に上り、国民の反発の強さを示した。それを踏まえると、今回の賛成率は驚異的な高さである。[br] その数字自体を疑問視する声もある。欧州連合(EU)は投票の強制、秘密侵害、二重投票などの不正疑惑を指摘した。[br] 憲法改正は3月の議会で成立したにもかかわらず、プーチン氏は全国投票にこだわった。「国民の絶大な信任」をよりどころに自らの求心力を確保し、「プーチン後」を狙う動きを一切封じる戦略だろう。[br] そこには焦りもうかがえる。全国投票を呼び掛けた手法がそれを裏付ける。4月実施の投票予定が新型コロナウイルスの国内まん延のため延期を余儀なくされたものの、今回強行した。[br] 投票直前にはコロナ禍による苦境に配慮した経済政策を発表。さらに、もっぱら社会保障や生活向上を訴え、続投条項に全く触れない争点隠しのキャンペーンを展開した。5月予定から延期された対ドイツ戦勝75年記念の軍事パレードを6月末に挙行し愛国心を鼓舞。それと連動させて投票開始の日程を組んだ。[br] 最近ではプーチン氏の支持率が59%と過去最低を記録した。14年クリミア編入時の愛国心高揚による政権浮揚効果はとうについえているのだ。[br] レバダ・センターとカーネギー国際平和財団モスクワセンターは年初に発表した報告で、国民の「変革願望」を力説、対外政策よりも国内経済や社会問題重視を求めていると分析した。[br] 「終身大統領」とも批判されるプーチン氏は「安定」の維持を説き、長期政権を正当化する。だが、現実との乖離(かいり)が広がっている。政治学者タチアナ・スタノバヤ氏によると、過去の実績から抜けきれない指導者には、反政府勢力だけでなく、政権内の支配層からも安定の保証とはなり得ないとの冷めた見方が出ているという。未来志向を打ち出せない閉塞(へいそく)の代償は大きい。