天鐘(7月2日)

今から三十数年前、支局勤務で熾烈(しれつ)極まる首長選を目の当たりにした。千円札2枚が“ニッカ”、3枚が“サントリー”の隠語で呼ばれ、お札がねじ込まれた健康飲料の瓶や乳酸菌飲料の容器が玄関先を飛び交った▼選挙の告示前、支局の玄関に熨斗(のし.....
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 今から三十数年前、支局勤務で熾烈(しれつ)極まる首長選を目の当たりにした。千円札2枚が“ニッカ”、3枚が“サントリー”の隠語で呼ばれ、お札がねじ込まれた健康飲料の瓶や乳酸菌飲料の容器が玄関先を飛び交った▼選挙の告示前、支局の玄関に熨斗(のし)紙を貼った木箱入りの洋酒が置いてあった。贈り主は察しがついたので、「拾得物」として警察に届けた。警察も納得して受理してくれたが、魔の手はそこここに伸びている▼昨夏の参院広島選挙区を巡る買収事件で、前法相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員が94人に2570万円を配った容疑で逮捕された。自民党本部から案里氏側に1億5千万円に上る破格の資金投入があった▼配ったのは「手持ち資金」(克行容疑者)との説明だが、希(まれ)に見る大盤振る舞いである。当初、首長や地元議員は受領を否定していたが、一部の首長が認めると「実は…」と“告白ドミノ”が起きているとか▼トイレでポケットにねじ込まれた人もいる。戦いでは安倍首相も街頭で「案里さんをよろしく」と訴えた。突き返すには首相の顔に泥を塗るぐらいの度胸が要ったのでは▼“辞職ドミノ”も起きている。政権中枢の息が掛かった封筒だけに「危ないと思ったが、返せば失礼に…」と。落選した自民の対立候補側と誤解も生む。弱みに付け込んだ不条理で許し難い犯罪だ。このツケは一体どこへ回るのか―。