時評(6月24日)

政府が山口、秋田両県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画の停止を決めた。河野太郎防衛相は、迎撃ミサイルを発射した後ブースター(推進補助装置)部分が周辺民家などに落ちる可能性を完全には排除できないために計画を停止.....
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 政府が山口、秋田両県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画の停止を決めた。河野太郎防衛相は、迎撃ミサイルを発射した後ブースター(推進補助装置)部分が周辺民家などに落ちる可能性を完全には排除できないために計画を停止すると説明。安倍晋三首相は「地元への説明の前提が違った以上、進めるわけにはいかない」と語った。計画の事実上の白紙撤回だ。[br] イージス・アショアの配備は2017年に閣議決定された。北朝鮮などの弾道ミサイルから日本全域を守るため、東日本で秋田県、西日本で山口県に1基ずつを25年度に配備することを目指し、調整を続けていた。[br] だが計画には当初からさまざまな疑問がつきまとっていた。まず、約4500億円という巨額な費用だ。安倍首相がトランプ米大統領の要求に応えて米国製兵器の「爆買い」に応じたことへの批判は根強い。既に約120億円が支払われており、配備計画の停止で今後、違約金が発生する恐れもある。[br] イージス・アショアのそもそもの迎撃能力を疑問視する見方もある。北朝鮮は弾道ミサイル技術を急速に向上させており、高性能のミサイルには対応できない可能性も指摘される。[br] 配備先に決まっていた地元ではイージス・アショア自体がミサイルの攻撃目標になるのではないか、さらにはブースターなどの部品が住宅地に落下するのではないかとの強い不安を抱いていた。[br] 防衛省はこれまで、ブースターは自衛隊の演習場内に落下すると説明してきたが、米側との協議で確実に演習場内に落とすことはできないことが判明したという。単なる杞憂(きゆう)ではなかったことが明らかになった。[br] 配備の前提条件が根本から崩れることになった以上、計画が撤回に追い込まれたのは当然だ。大きな失態だと言わざるを得ず、安倍首相の政治責任が問われる。[br] 配備計画の撤回により、北朝鮮や中国の弾道ミサイルの脅威にどう対応していくのかという課題は残ったままだ。政府は国家安全保障会議(NSC)で安全保障政策の新しい方向性を議論する方針で、自民党内では敵基地攻撃能力の議論を求める声が高まっている。安倍首相も前向きな姿勢を示したが、あまりにも短絡的ではないか。[br] まずは、今回のイージス・アショア配備の停止を厳しく検証し、その結果を国会と国民に詳しく説明することから始めなければならない。