時評(6月21日)

町村議員のなり手不足対策として、選挙候補者のポスター製作や選挙カーにかかる経費を公費で負担する改正公選法が今月、国会で成立した。立候補しやすい環境を作るばかりでなく、地縁や血縁に依存する傾向にある町村議選を変えるきっかけにしてほしい。 選挙.....
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 町村議員のなり手不足対策として、選挙候補者のポスター製作や選挙カーにかかる経費を公費で負担する改正公選法が今月、国会で成立した。立候補しやすい環境を作るばかりでなく、地縁や血縁に依存する傾向にある町村議選を変えるきっかけにしてほしい。[br] 選挙運動費用の一部を公費負担する公営制度は、県議選や市議選などで運用されてきた。今回の法改正によって町村議選や町村長選にも拡大される。町村議選ではビラ配布も解禁される一方、得票数が法定割合を下回ると没収される、供託金15万円の納付要件を定め、安易な立候補を抑制する。[br] 地方議員のなり手不足は急激な人口減少を背景としている。町村部では、市部に比べて地域の将来を担う若者の流出が顕著。その上、議員報酬が低いことなどを理由に働き盛りの世代の議員が少ないのが現状だ。[br] 4年に一度の統一地方選となった2019年に青森県内で行われた、補欠選挙を除く市町村議選では、市部が7市いずれも選挙戦となったのに対し、町村部では19町村のうち4町村が無投票だった。町村部の担い手が少ないことを物語った。[br] 選挙戦となった町村部を見ると、ほとんどの陣営がポスターを用意した一方、選挙カーを使わないケースは珍しくなかった。街頭での政策の訴えは乏しく、地縁や血縁など固定票が結果を左右したことがうかがえた。候補者の中には目立った選挙運動をせず、得票数が法定割合に遠く及ばない新人もおり、有権者の厳しい目が向けられた。[br] 議員のなり手不足が懸念される中では、新人候補が名乗りを上げることは本来、歓迎すべきことだ。だが、候補者を増やすことが最終目標ではない。社会情勢の変化に合わせながら、いかに町村議会を活性化させるかを考えなければならない。[br] 県内では昨年、県議選を巡る大きな公選法違反事件もあり、古い選挙体質が一因とされた。政策論争ではなく、地縁や血縁ばかりに頼る選挙戦がまかり通ってきたことも無関係ではないだろう。こうした選挙風土を根付かせてしまったのは候補者だけでなく、投票権を持つ有権者の責任でもある。政治から目を背けては何も解決しない。[br] 町村議員のなり手不足対策には、さらに踏み込んだ制度改正や議員の待遇面の改善なども必要だろう。当事者である候補者と有権者双方の姿勢にもかかっており、政治家が襟を正すとともに、住民は政治への関心をもっと持つことが不可欠だ。