時評(6月10日)

憲法改正に必要な手続きを定めた国民投票法改正案は、今国会での採決が見送られる見通しだ。 国の最高法規である憲法の改正への賛否を呼び掛ける運動の規則を決める法改正を巡って、与野党間に隔たりがある以上、当然の扱いだろう。 商業施設への共通投票所.....
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 憲法改正に必要な手続きを定めた国民投票法改正案は、今国会での採決が見送られる見通しだ。[br] 国の最高法規である憲法の改正への賛否を呼び掛ける運動の規則を決める法改正を巡って、与野党間に隔たりがある以上、当然の扱いだろう。[br] 商業施設への共通投票所の設置など、公選法に合わせて有権者の利便性を高める改正案は2年前に提出された。衆院憲法審査会で継続審議となっており、まだ一度も審議されていない。[br] 今国会で初めて開かれた先月28日の衆院憲法審では、自民党が早期採決を求めたのに対し、立憲民主党が政党CM規制強化を含む改正の同時実施を主張するなどして折り合えなかった。[br] 国民投票は、改憲案への賛否の意見を問う制度だ。政党名投票の衆院選の比例代表などを除いて、候補者を選ぶ公選法による選挙に比べると、賛成、反対両派が展開する投票運動の宣伝が有権者の判断を大きく左右するとの指摘がある。[br] 国民投票法が成立した2007年以降、デジタル化の進展とメディアの激変によって、インターネットの影響力は飛躍的に増大した。昨年はネット広告費がテレビCM費を上回った。[br] 現行の投票法は、投票日の14日前以降に限ってテレビCMを禁止しているが、ネット広告は規制の対象外で、改正案も考慮していない。ツイッターなど会員制交流サイト(SNS)を通じた中傷やフェイクニュース、外国勢力の介入などを含め、新たに対応が必要な多くの課題があることは明らかだ。[br] 自民党は、改正案の採決後にネット広告規制を議論するとの姿勢だ。公明党は政党側の自主規制を提唱している。一方、立民党は、広告を出せる資金量が結果に影響を与えるとして、公正さを担保する議論を要求。国民民主党は、放送とネット上の政党CMと外国人の寄付を禁止する改正案を提出している。[br] 自らの改正案にこだわらず問題点を洗い直し、対処策を講じるために野党との丁寧な議論に応じるのが与党の責務だ。野党は改正案採決に応じれば、安倍晋三首相が主導した自衛隊の明記など改憲4項目の審議を自民党が強行してくると警戒。与党にも、野党が改正案をハードルに使っているとの不満がある。[br] 与野党間に相互不信があっては、建設的な改憲論議は望めない。新型コロナウイルスが国民の意識を変えつつある時代に入り、改憲が必要な条項は何なのかという原点に返って、冷静に議論を進めるよう期待したい。