時評(6月8日)

新型コロナウイルスの感染拡大で、青森県の地域経済を支えてきた観光業界が苦境に立たされている。国内旅行の需要は大幅に低迷、順調な伸びを見せていた訪日外国人客(インバウンド)の動向も先が見通せず、早期回復の道は険しい。 政府は国内外から観光客を.....
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 新型コロナウイルスの感染拡大で、青森県の地域経済を支えてきた観光業界が苦境に立たされている。国内旅行の需要は大幅に低迷、順調な伸びを見せていた訪日外国人客(インバウンド)の動向も先が見通せず、早期回復の道は険しい。[br] 政府は国内外から観光客を誘致し、経済を活性化させる「観光立国」の実現を進めてきた。県内の各地域でも官民が一丸となり、インバウンド対策をはじめ、豊かな自然や食、文化・芸術、祭りといった観光資源を生かした誘客に取り組んだ。[br] その結果、2018年度の県観光入り込み客は実人数で1637万6千人(前年比5・3%増)。うち日帰り客は1140万5千人(0・4%増)、宿泊客は497万1千人(18・5%増)とそれぞれ増加した。観光消費額は1902億2500万円(2・1%増)と、現行基準で調査が始まった10年以降、最高となった。[br] だが、状況は一変した。感染拡大防止のため、外出や旅行の自粛、施設の休業、集客を見込んだ大型イベントが中止となった。県内の主要宿泊施設では、今年4月の宿泊者数が前年同月比73・2%減と大幅に落ち込み、5月の予約状況も9割減と厳しさは増している。休廃業する事業者も出てきた。[br] 緊急事態宣言の解除に伴い、移動やイベント開催の制限は段階的に緩和されるものの、感染の恐れは隣り合わせのまま。いかに感染予防と経済活動を両立させるかが課題となる。[br] 政府は観光事業者らを支援する「Go To キャンペーン」を7月にも始める。宿泊や飲食料金の割引が柱で消費喚起を促す。県も連動し、首都圏からの誘客に力を入れる考えだ。[br] とはいえ、感染の収束が見えない中でキャンペーンがスタートしても、人の動きが活発化するかは未知数だ。サービスを提供する事業者の休廃業が進めば、受け入れ態勢が整わず、反転攻勢どころではないだろう。[br] 第2波、第3波の発生が懸念され、影響は長期化が予想される。海外からの渡航制限など“外貨”の獲得が当分見込めない状況を踏まえ、県は今後、県民が県内宿泊施設を通常料金より安く利用できる事業を展開する予定。インバウンドに頼らずに、県民の潜在的な需要の掘り起こしは不可欠だろう。[br] 今だからこそできる旅行や宿泊の新たなプランの開発は、短期的だけでなく必ず将来にもつながるはずだ。柔軟な発想で戦略を再構築し、危機的状況を打開してほしい。