八戸港で46年間にわたり2者で運営されていた水産物卸売業務が一本化される。八戸みなと漁協が20日に卸から撤退、株式会社の八戸魚市場が単独で業務を担う。背景は主力のスルメイカやサバなどの漁獲不振。同社も卸売部門は赤字が見込まれており、体制一新の高揚感とはほど遠いのが実態だ。[br] 喫緊の懸案だった漁協市場部の人員については、19人のうち約半数が同社に転籍し、残りは漁協の他部署への配置や別の水産会社への再就職などで吸収。数人は退職するが、ほぼ行き先のめどが付いたという。[br] 卸売業務を巡っては、株式会社と協同組合という毛色の違う2者が漁船誘致などでサービス合戦を繰り広げるなど、競い合って“ハマ”を盛り上げてきた。半面、1990年以降は一本化による効率化を目指す動きが何度か浮上しながら、実現に至らなかった経緯もある。[br] 漁協にとって卸は事業総取扱高の大半を占める主要部門で、大きなステータスだった。顧客の小型船の漁業者には荷受けなどでのきめ細かな対応が重宝され、撤退を惜しむ声は小さくない。ただ、収支自体は赤字で、漁協関係者は「借金で迷惑をかける前に辞めようということ」と漏らす。厳しい現実を踏まえた上での苦しい決断だった。[br] 受け皿となる八戸魚市場も新たな負担増の問題を抱えることになる。一本化に伴い収入、経費はいずれも増えるとみられる。水揚げ減が続くだけに、とても楽観視できない。[br] 水揚げはここ10年ほど、スルメイカとサバの2本柱が互いに補完するような形で推移してきた。さらに、近年は単価こそ安いもののイワシも伸び、数量を下支えしてきた感があった。しかし、昨年は69年ぶりに6万9千トン台を割るなど不振を極めた。年明け以降も回復の兆しは見えていない。[br] 漁獲不振は全国的な傾向だ。今年4月には八戸と同様に2者体制だった宮城県の塩釜市魚市場で、株式会社塩釜魚市場と塩釜地区機船漁協が新会社「みなと塩釜魚市場」を立ち上げ、卸売業務を一本化したばかり。今後も水産の各方面で新たな動きが顕在化するかもしれない。[br] 八戸港では稼働低迷で赤字が続く荷さばき施設A棟に加え、年明けに供用開始予定の同D棟も、経費増を招くのではないかとの懸念が高まっている。年々変化する漁業環境に、行政側の施策が対応し切れてない印象を受ける。今こそまさに、水産振興の在り方について再考を迫られている時期なのではないか。