時評(5月28日)

新型コロナウイルスの影響で8月の全国高校野球選手権大会が中止となった。一方、緊急事態宣言の解除により、プロ野球は6月の公式戦開幕が決まった。高校球児の夢は閉ざされたが、ようやく近づいたプレーボールへの期待も高まる。球音の明暗が交錯する初夏で.....
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 新型コロナウイルスの影響で8月の全国高校野球選手権大会が中止となった。一方、緊急事態宣言の解除により、プロ野球は6月の公式戦開幕が決まった。高校球児の夢は閉ざされたが、ようやく近づいたプレーボールへの期待も高まる。球音の明暗が交錯する初夏である。[br] 高校野球は全国約3800校が参加する大規模イベントで、地方大会から甲子園大会までの大会期間も長丁場だ。参加する選手以外に、大会運営に携わる関係者も膨大だ。感染の第2波、3波を考慮すると、選手の移動、宿泊を伴う全国大会開催はリスクが大きい。[br] 野球以外の各競技で競う全国高校総合体育大会も既に中止が決まっている。休校による学業の遅れを取り戻すため、夏休みの短縮も検討されている。日本高校野球連盟の中止決断も致し方ないと理解できる。[br] 大会が取りやめになってもプロ選手や大人の競技者には次のチャンスがある。東京五輪も1年、延期された。悲痛なのは、高校3年生の選手にとって今夏の甲子園や高校総体は「一生に一度」の機会だったことだ。目標をなくした彼らの喪失感は計り知れない。[br] 多感な世代の選手たちへの心のケアも含めて指導者や競技関係者は知恵を絞るべきだ。大舞台に向かって努力した経験を、今後にどう生かすか。仲間とともに育んだチームワークや友情をこれからの人生の糧にしてほしい。そのためには周囲の手助けがいつも以上に求められる。[br] 高校野球では、地方で検討されている代替大会もそのひとつになろう。春の選抜大会も中止だった。このままでは今の高校3年生は今季、公式戦をほとんど経験することなく卒業することになる。頑張ってきたことを示す機会を与えてやりたい。プロなど上のステージを目指す選手がアピールする場も必要だ。[br] 自粛生活が長引き、人々はスポーツをする喜び、観戦する楽しみ、応援する一体感を失っていた。球音やスタジアムの歓声が消えて、あらためて社会にスポーツが深く根付いていたことを認識した。プロ野球の予定より3カ月遅れの開幕を歓迎したい。当面は無観客開催となるが、試合の模様はテレビやネット中継で伝えられる。選手もファンも、日常にスポーツが戻ってきた幸福を感じるはずだ。[br] 状況がさらに改善すれば球場に観客を入れることもできよう。関係者全体の健康管理に配慮しながら、スポーツを通じても徐々に普通の日々を取り戻してゆきたい。