天鐘(5月28日)

かつて大相撲に「四十五日」の異名をとった力士がいた。明治から大正にかけて活躍した第22代横綱・太刀山。5斗俵4俵を担ぐと言われる怪力で、強力な突っ張りを武器にした▼立ち会いから1発、そして2発…。2発目が当たる前に既に相手は土俵下。あっとい.....
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 かつて大相撲に「四十五日」の異名をとった力士がいた。明治から大正にかけて活躍した第22代横綱・太刀山。5斗俵4俵を担ぐと言われる怪力で、強力な突っ張りを武器にした▼立ち会いから1発、そして2発…。2発目が当たる前に既に相手は土俵下。あっという間の勝負である。「ひと突き」(ひと月)と「半分」で四十五日。〈太刀山は四十五日で今日も勝ち〉の川柳が残る▼さて、夏場所の大相撲も中止になったこの「ひと月半」は、あっという間か、長かったか。4月7日からの緊急事態宣言が解除され、少しずつだが元の生活へと向かう。「やっとひと山」だろうが、振り返れば感慨もわく▼「日本の成功の要因は、政府の要請にきちんと応えた国民にある」。海外メディアのそんな総括には報われた気分である。マスク着用、外出も控えて頑張った。希望があれば「また明日」の力も出る▼もっとも、政府の政策そのものは失敗との見方があることも報じられている。行き当たりばったりのような対応の結果を手放しで喜んではなるまい。「日本モデルの力」と安倍晋三首相は強調するが、踏ん張ったのは国民である▼ともあれ、新しい局面に違いない。経済も次第に回りだそう。それでも、ひとたび気を抜けば再び勢いを増して襲ってくるのが感染症。油断は禁物と心得たい。かの怪力横綱の得意技には「呼び戻し」というのもある。