新型コロナウイルス感染症の影響で、スポーツイベントの自粛ムードが収束しない。感染者数が多いとは言えない青森県でも、5月以降に予定されていた県高校総体、県中学総体の中止が決定。競技、地区レベルで代替大会を模索するが、それすら取りやめる動きもある。ひたむきに取り組んできた生徒の落胆はいかばかりか。[br] 短期間に複数の競技大会が集中実施される高校総体、中学総体は、地区大会(県大会)から東北大会、全国大会へとつながっていく、次代を担う中高生にとって年間の大きな目標。生徒たちは上位入賞や自己ベスト更新など思い思いに飛躍を誓って大舞台に挑み、悲喜こもごものドラマを繰り広げる。まさに「スポーツの祭典」だ。[br] 特に3年生は、泣いても笑っても総体を最後に競技に区切りをつけ、受験勉強などに移行するケースが多い。総体に向けた努力、仲間やライバルとの切磋琢磨(せっさたくま)、成功・失敗体験はその後の人生の財産となる。[br] とはいえ、コロナ禍の今年は例年と状況が大きく異なる。全国高校体育連盟、日本中学校体育連盟は長時間の移動や宿泊による感染リスクが避けられないなどとして、全国大会の中止を決定。これに追随するように青森県高体連、同中体連は県大会の中止にかじを切り、高体連は各競技専門部に、中体連は各地区に、それぞれ代替大会や地区大会の開催を委ねた。[br] 高校競技専門部の多くは代替大会開催を目指しているが、いわゆる「3密」が避けられない競技などは断念。県南地区の中学地区大会は、これまでに三戸、八戸が開催中止を決定した。[br] 長期の休校に伴う練習不足によるけがの懸念、授業時間確保の必要性など、課題が多いのは理解できる。考え得る対策を講じてもなお、感染への不安は尽きないが、それでも開催へ腐心する高校競技専門部の姿勢には頭が下がる。[br] 県内の新型コロナ感染者は22日現在で27人だが、今月7日以降は未確認。八戸市は4月3日を最後に感染者が出ていない。[br] 1カ月半以上も感染者が出ていない同市で、中学地区大会が代替大会を含めて見送られたのは残念だ。県外とはいえ隣接する岩手県北2地区が開催を目指す中、この先、身近で感染者が出なければ、春以降、練習試合すらまともにできていない生徒の喪失感は増すばかりだろう。[br] 部活動を学校教育の一環とするならば、生徒、特に3年生の“完全燃焼”へ、周囲の大人はしっかり知恵を絞るべきだ。