天鐘(5月25日)

新型コロナを巡る首都圏の緊急事態宣言解除が注目される中で、依然として「感染者ゼロ」を続ける岩手県。なぜ岩手だけが―の“謎”は、いまや世界的な話題らしい▼少々自虐的ではあるが、納得もしながら読んだのは本紙の達増拓也知事のコメント。「首都圏の1.....
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 新型コロナを巡る首都圏の緊急事態宣言解除が注目される中で、依然として「感染者ゼロ」を続ける岩手県。なぜ岩手だけが―の“謎”は、いまや世界的な話題らしい▼少々自虐的ではあるが、納得もしながら読んだのは本紙の達増拓也知事のコメント。「首都圏の1都3県を足してもまだ広い」。低い人口密度はすなわち天然のソーシャルディスタンス。確かに岩手ならではの武器である▼「最初の感染者には誰もなりたくない。周りに何と言われるか」。洋野町に住む知人はそう本音を漏らす。感染は悪ではないのだが、気持ちは分かる。「世間体がある。だから頑張る」と真剣だ▼ある番組で岩手医大の櫻井滋教授が指摘していたのは、東日本大震災の教訓である。あの悲しい出来事を契機に人々の命や生活に関する意識が変化した、と。「価値観が変わる体験を一度したことが、この難局に生きている」▼たとえば「ロックダウン」と聞いても、それを「津波が来ること」と置き換え、心構えができる。他人に言われずとも抑制的な行動が元々とれていたのが岩手人―との分析だ。県民性の表れのようで、頼もしくなる▼その要因はさまざまあろうが、淡々と「ゼロ」を継続する県の注目度は高まるばかり。朝のテレビで関口宏さんが言っていた。「こうなると応援したくなっちゃうよね」。雨ニモマケズ、風ニモマケズ、そしてコロナニモ。