時評(5月23日)

あきれて言葉を失った。週刊文春が報じた黒川弘務・東京高検検事長の賭けマージャン。刑法の賭博罪にも問われかねない振る舞いだ。しかも緊急事態宣言下だったとは、厳正な職務遂行をイメージした「秋霜烈日」のバッジを着ける検察官とは懸け離れた実像。検察.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 あきれて言葉を失った。週刊文春が報じた黒川弘務・東京高検検事長の賭けマージャン。刑法の賭博罪にも問われかねない振る舞いだ。しかも緊急事態宣言下だったとは、厳正な職務遂行をイメージした「秋霜烈日」のバッジを着ける検察官とは懸け離れた実像。検察への信頼が揺らいだ。[br] 黒川氏は辞職願を安倍晋三首相に提出。森雅子法相は本人が法務省の調査で賭けマージャンを認めたと首相へ報告し、「不適切な行為」として訓告処分にしたと発表した。当然の帰結といえる。黒川氏の定年を強引に延長した首相や法相の政治責任は重大だ。首相は批判を「真摯(しんし)に受け止める」と述べたが、口先だけではなく、それを実際に形として示すべきだ。[br] 政府は黒川氏の定年を意図的に半年引き延ばした経緯がある。検察庁法で定められている定年を内閣、法相の裁量で延長できるとし、続投を閣議決定した。背景には次期検事総長に登用する構想があると推測された。[br] 国会にも、これと符合する検察庁法改正案を提出、審議を進めてきた。しかし三つの欠陥が見られる。[br] 第一は、検察官は定年が検事総長は65歳、その他の検事は63歳との法律の規定を軽視したことだ。公正・公平な起訴権限行使を保障する目的で特別な定年が採用された立法趣旨に反する。[br] 第二に、検察官は法務省の適格審査会による議決などがないと辞めさせられないが、そのような仕組みを持たない一般の国家公務員法改正案と束ねて審議されている。しかも公務員法では定年延長には人事院の承認が必要だが、検察庁法改正案からは人事院の文字が消え、外部チェックもなくなった。これは到底、妥当とは言えない。[br] 第三に、閣議決定は、検察官には定年延長を適用しないとする従来の解釈を一方的に変更した。今回は不適格者に特例を認めた結果にもなっており、取り消すべきだ。[br] 政府、与党は今国会成立を断念し、安倍晋三首相は公務員法改正案自体を見直す考えを表明した。ただ高齢化社会の進行を考えれば、一般公務員の定年延長は当然で、速やかな実現を求める人は多いだろう。今や65歳定年を現実的に考えるときだ。[br] やはり、検察庁法は切り離し、もっと慎重かつ入念に、検察官の定年を含め検察の在り方を練り直し、論議する必要がある。その上で人事や実務の刷新を図りたい。時の政権の思惑が入り込む余地を残し、公正・中立な司法をゆがめてはならない。