時評(5月18日)

十和田市のアートによる街づくり「アーツ・トワダ」。市現代美術館を中心に街全体を美術館に見立てる取り組みで、本格始動から丸10年となった。 国の「日本の道百選」に選ばれている官庁街通りは2000年代、省庁再編や合同庁舎の集約で空洞化が課題に。.....
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 十和田市のアートによる街づくり「アーツ・トワダ」。市現代美術館を中心に街全体を美術館に見立てる取り組みで、本格始動から丸10年となった。[br] 国の「日本の道百選」に選ばれている官庁街通りは2000年代、省庁再編や合同庁舎の集約で空洞化が課題に。解決策として打ち出されたのが、空間そのものを活用し、多彩な表現方法が可能な現代アートによる再生だった。08年に中核施設となる美術館が開館。周辺の広場や通りに作品が整備され、10年4月にグランドオープンした。[br] 美術館単独の入館者は、19年度末までの累計で177万人。開館後の3年は年間17万人超が訪れ、一時は11万人まで落ち込んだものの、近年はインバウンド(訪日外国人客)の影響もあって回復し、19年度は16万人だった。[br] プロジェクト10周年に当たって、美術館は金沢21世紀美術館(金沢市)の立ち上げなどに携わった鷲田めるろ氏を新館長に迎え、新たなスタートを切った。現在は新型コロナウイルスの影響で休館しているが、常設展示の増築や一部入れ替えを初めて実施する予定。定期的に開催している企画展とともに、市民やファンの話題を呼びそうだ。[br] 官公庁街周辺に点在するアートは、街の景観に程よく溶け込み、市の魅力を高めている。ブランド総合研究所(東京)による「市区町村魅力度ランキング」では、県内で唯一、15年から5年連続で100位以内にランクイン。国内屈指の観光地・十和田湖や奥入瀬渓流に加え、現代アートが定着し、知名度アップにつながったとみられる。[br] 若者世代を中心に来訪者が増え、街に活気が感じられるとの指摘がある一方で、地盤沈下が進む中心商店街の振興につながったとは言い難い。市商工観光課によると、商店街の空き店舗率は08年度の26%に対し、19年度は31%に上昇した。[br] 市は21年度、新たな活性化策として、商店街に面する旧銀行跡地に、アートイベントも実施可能な多用途施設「(仮称)地域交流センター」を新設する方針。アートを目的に訪れた観光客が商店街まで足を伸ばし、回遊する仕組みづくりを進める考えだ。[br] 官庁街とシャッターが目立つ商店街は、十和田の表と裏の顔である。大型店との競合、ネットショッピングの拡大、人口減少によって、往時のにぎわいを取り戻すのは容易でない。10年後の街はどうあるべきか。施設整備だけでなく、官民が一体となって知恵を絞る必要がある。