新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言から1カ月近くが経過、外出自粛で、欧米のような感染爆発はひとまず回避でき、感染は4月中旬をピークに減少に転じた。減り方は期待より遅い。安倍晋三首相は緊急事態宣言を7日以降も延長する方針を示し、政府の専門家会議も外出自粛維持を提言した。[br] 今も病院や福祉施設で集団感染が多発し、死者は依然多く、医療現場の危機も一部で深刻なままだ。緊急事態は長引くほど経済や社会への打撃は大きくなるが、流行抑制を確実にするためやむを得ない。延長期間に流行をできる限り収めたい。[br] 専門家会議の西浦博北海道大教授が「人と人の接触を8割減らせば1カ月で感染者は大幅に減る」とした数理モデルを基に、安倍首相は「最低7割、極力8割の接触減」を訴えた。人々は行動を変えて、大型連休の旅行もかなり控えた。[br] ただ、行動変容による接触減は全国平均で目標の8割に達せず、感染抑制の効果は十分でない。それでも、緊急事態で外出自粛と特定業種の休業を続ければ感染はもう一段減る。緊急事態宣言の時は感染爆発の危機だったとすれば、延長の先にはトンネルの出口が見える。さらに緊急事態解除後も油断せず、接触を減らす習慣は続けたい。[br] 検査と治療の拡充はなお課題だ。日本は感染を判定するPCR検査が外国より少なく、感染実態が不明だ。検査数が低迷し続け、早期発見、早期隔離をあきらめたともいえる。保健所の相談センターを介した方式に加え、医師会の検査センターなども活用し、医師が必要と認めた患者は迅速に検査してほしい。[br] 検査を増やすことは死亡者を減らすためにも必要だ。広範に検査して陽性率が7%以下の国では致死率が低いことを千葉大のグループが確かめた。慶応大病院で一般の入院患者を検査したところ、6%で感染者が見つかった。市中感染が広がっている可能性はある。[br] 同時に感染歴を示す抗体検査も望ましい。米国では把握された感染者数の10倍以上で抗体陽性が確認された。感染しても無症状の人は意外に多いとみられる。日本でも早く抗体検査をすべきだ。感染実態が浮かび上がれば対策は変わってくる。[br] 重症者を治療し、救命する医療の拡充は欠かせない。ホテルや自宅に待機する感染者の健康観察も強化して容体急変を見逃さず、適切に診療するよう求めたい。都市封鎖せずに自粛を軸に新型コロナ危機を乗り切るのは挑戦だ。ぜひ成功させたい。