時評(3月20日)

黒川弘務東京高検検事長の定年延長に関して、答弁を二転三転させる森雅子法相は、辞任に相当するのではないか。安倍晋三首相の任命責任が問われるだけでなく、このままでは、法務省、検察に対する信頼も、失われかねない。 法相は9日の国会答弁で、これまで.....
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 黒川弘務東京高検検事長の定年延長に関して、答弁を二転三転させる森雅子法相は、辞任に相当するのではないか。安倍晋三首相の任命責任が問われるだけでなく、このままでは、法務省、検察に対する信頼も、失われかねない。[br] 法相は9日の国会答弁で、これまで認めていなかった検察官の定年延長を可能にするよう法律の解釈を変更した理由について「社会情勢の変化」を挙げた。それを具体的に説明するよう野党から詰め寄られ、東京電力福島第1原発事故の際、「検察官は福島県いわき市から、市民が避難していない中で最初に逃げた」と答える。民主党政権下の原発事故対応を批判する思惑があったとみられる。[br] しかし、そもそも定年延長とどう結びつくのか、答弁はあまりに唐突で支離滅裂だ。しかも、法務行政のトップ自らが公平・公正性の求められる検察組織を愚弄ぐろうしたのである。野党が更迭を求めるのも当然だろう。だが、首相は法相を「厳重注意」にとどめ、要求を拒んだ。[br] 最終的に法相は「しっかり事実を確認し、答弁するべきだった」と撤回・謝罪したとはいえ、野党から「逃げた」発言を批判されても、「個人的見解」などと突っぱねていた点を見ると、本心から謝罪したのか疑わしい。[br] また黒川氏の人事などに関し、「行政裁量」を持ち出し、「答弁を差し控える」と繰り返す。国会を軽視するような対応は、民主党政権時代の2010年、「個別の事案については差し控える」と答弁していれば務まると口にして、法相を更迭された柳田稔氏と変わらない。[br] 検事長の定年延長を閣議決定して以降、森法相の答弁は不安定で、修正に修正を重ねている。国家公務員法の定年制は検察官に適用されないという1981年の人事院の解釈を変更したと強調するが、最初に問われた時に「知らない」と述べ、混乱を招いた。その後もどんなプロセスを経たのか、説得力のある説明がなされたとは言い難い。[br] 前任の法相の河井克行氏は、妻の案里参院議員陣営の公選法違反疑惑が報じられ辞任。夫婦とも広島地検の事情聴取を受けている。急きょ起用された森氏だけに、安倍首相は2代続けての法相の途中退場は避けたいところだろう。[br] ただ、法務省は基本法制の維持および整備、法秩序の維持、国民の権利擁護などを任務としている。それを率いる閣僚として本当にふさわしいのか。安倍首相の再考を求めたい。