天鐘(3月20日)

日増しに気温が上がり、三陸の海も陽光を受けて明るい色に変わってきた。浜辺はすっかり春の表情。穏やかさに誘われて一昨日、八戸から階上の海岸線を車で走ってみた▼海藻採りがたけなわの季節である。磯に生い茂ったツノマタやマツモ、ワカメなどの出荷がに.....
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 日増しに気温が上がり、三陸の海も陽光を受けて明るい色に変わってきた。浜辺はすっかり春の表情。穏やかさに誘われて一昨日、八戸から階上の海岸線を車で走ってみた▼海藻採りがたけなわの季節である。磯に生い茂ったツノマタやマツモ、ワカメなどの出荷がにぎやか。産直施設に新物が豊富に並ぶ。ここまで種類がそろうと、「海藻しゃぶしゃぶ」の出番。以前、郷土料理の取材で教えてもらった三陸ならではの味だ▼初めて食べた時の鮮烈さが忘れられない。ちょうど今頃だった。沸かした昆布だしに生をさっとくぐらせて酢じょうゆで頂く。柔らかく、ぷーんとした磯の香りに心身も目覚めるよう。いくらでも進んだ▼目の前の海がもたらす春の恵みである。安価なのもありがたい。地魚も多彩に揚がっている。季節を告げる特産物がこれほど近くで手に入るのに、広く知られていないのは何とも残念▼新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界で外出制限の動きが広がっている。日本も全面的に渡航を注意喚起。国内旅行も抑制され、新幹線は空席が目立つ。ライブやスポーツ大会などの自粛が続く▼「どこにも行く所がない」との嘆きも聞かれるが、そんなことは全くない。悲観的な空気に覆われがちなこんな時こそ、身近にある風光、逸品に気付くべきだろう。眺めるだけで心洗われる。旬の海産物が買いに来る人を待っている。