天鐘(3月12日)

「松原の外れ辺りに春から夏の末ぐらいまで住んで見たい」(『美しい海べ』)。詩人佐藤春夫にこう言わしめた種差海岸に春が訪れた。芝生はまだ茶褐色だが、水辺に福寿草が咲き、海ではホッキ貝漁がたけなわだ▼福寿草は黄色の蕾(つぼみ)を目いっぱい開き、.....
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 「松原の外れ辺りに春から夏の末ぐらいまで住んで見たい」(『美しい海べ』)。詩人佐藤春夫にこう言わしめた種差海岸に春が訪れた。芝生はまだ茶褐色だが、水辺に福寿草が咲き、海ではホッキ貝漁がたけなわだ▼福寿草は黄色の蕾(つぼみ)を目いっぱい開き、春の陽光を浴びている。薄青の可憐な花を付けたオオイヌノフグリも彩りを添える。先週末、海岸が久方ぶりの人出で賑(にぎ)わった▼凧(たこ)揚げに興ずる親子、孫と散歩する祖父母、春の日差しに誘われたカップル…。インフォメーションセンターを運営する(株)ACプロモート代表取締役の町田直子さんは「かつての種差を思わせる人出だった」と▼どうやらこれも新型コロナウイルスの影響らしい。政府の「瀬戸際」表明と「一斉休校」要請で、家に閉じ込められた子供達のストレスは積もる一方。外で羽を伸ばしてあげたいという親心が重なったようだ▼部屋でゲームに夢中になったり、ゴロゴロしても数日で飽きてしまう。新鮮な空気を吸い、芝生を思い切り駆け回りたいと思うのは、今も昔も変わりはないようだ。笑顔ではしゃぐ姿に「ホッとした」と町田さん▼自宅で鬱々(うつうつ)と過ごす子供達に、文科省は感染リスクを極力避けるなら、公園での適度な運動や散歩は認める考えを示した。ウイルスも怖いがストレスも怖い。春の陽光を浴びながら芝生で暫(しば)し深呼吸。心身のリフレッシュも必要だ。