天鐘(3月10日)

火事のどさくさに紛れて盗みを働く「火事場泥棒」。いつの世もこの手の悪巧(わるだく)みは後を絶たない。新型コロナウイルス禍に乗じた許し難いマスクの転売も同根である。その卑劣な行いにやっと“鉄槌(てっつい)”が下される▼喧嘩と並び「江戸の華」と.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 火事のどさくさに紛れて盗みを働く「火事場泥棒」。いつの世もこの手の悪巧(わるだく)みは後を絶たない。新型コロナウイルス禍に乗じた許し難いマスクの転売も同根である。その卑劣な行いにやっと“鉄槌(てっつい)”が下される▼喧嘩と並び「江戸の華」と言われた火事の原因は大半が放火だったとか。しかも、そのほとんどが焼け出された金品や家財を狙う泥棒が目的だったというから罪深い▼立ち入り禁止のお触れを出しても盗っ人はお構いなし。ついに町奉行は「抵抗する者は構わず切り捨てる」と高札を掲げた。泥棒に気を奪われ、延焼を許したら奉行の責任に。まさにマスク騒ぎも同じ状況である▼薬店などで大量に買い占めたマスクや消毒液をネットオークションに出品。弱みに付け込んで通常の10倍もの高値で取引している。高齢者や基礎疾患を抱える“感染弱者”の不安など顧みない阿漕(あこぎ)な輩である▼「来週以降、マスク不足は緩和される」と菅義偉官房長官が国の威信に賭けて約束したのは2月12日。それから3週間過ぎても緩和どころか、医療現場もマスクに事欠き、緊急手術さえ危ぶまれる異常事態である▼政府は今日の閣議で関連法を改正、不当転売に懲役刑や罰金刑を科す。値崩れを恐れた転売屋は投げ売りを始めたが“汚れた商品”は簡単に捌(さば)けない。災害の度に暗躍する転売屋もついに攻守所を変えたようだ。マスクは真っ新(さら)に限る。