公正取引委員会は、楽天がサイト出店業者に求めた送料無料化に対し、緊急停止命令を出すよう東京地裁に申し立てた。独占禁止法が禁じた優越的地位の乱用の疑いがあるとの判断からで、3月18日に開始予定の無料化を止めさせるのが狙いだ。出店業者への負担押しつけかどうか。IT規制を強化する公取委の緊急申し立てで、双方の対立は司法の場に持ち込まれた。[br] 対立のきっかけは、通販サイト「楽天市場」1店舗での購入金額が3980円以上の場合に、送料無料の方針を各店舗に通知したことだ。顧客への送料分を肩代わりせざるを得なくなり負担が増すとして、立場の弱い出店業者が猛反発。公取委も、楽天に立ち入り検査を実施した。[br] 楽天はその後(1)送料込みの価格にすれば業者の負担にならない(2)サイトから撤退する店舗には出店料を払い戻す―と微修正。停止申し立てにも、優越的地位の乱用には当たらないとして、3月18日実施を貫く構えだ。[br] しかしこれでは、購入者にとって送料無料は見せかけになるか、出店業者が他の通販サイトとの競争上、送料分を負担する結果になりかねまい。「時代の流れは送料無料」との主張には無理があるのではないか。[br] 楽天が強硬姿勢を崩さないのは、アマゾン・コムの脅威があるからだ。ネット通販で米国市場の5割を占め世界で圧倒的な力を持つ。日本法人も、価格や使い勝手の面で顧客本位を優先した通販サイトが日本市場で急成長。先行していた楽天は、昨年12月の決算で8年ぶりの赤字となった。楽天の業績の陰りの背景には、両社のビジネス手法の違いがある。[br] アマゾンは、出店業者の商品も扱うが、自社仕入れの直売が主力だ。大型保管施設、注文、出荷、返品などの物流システムを整備、出店業者にも開放するため、有料会員は送料無料が基本だ。非会員の購入も多くは2千円以上は送料無料になる。[br] これに対し楽天の手法は、サイト上の商店の出店料収入が基本で、販売主体は各出店業者になる。このため送料や表示法はまちまちで、低価格化など顧客戦略を優先するアマゾンに比べ分が悪いのは当然だろう。[br] 「アマゾンに負けている理由は送料だ」と楽天は焦るが、巻き返しを図るため、出店業者に工夫や負担を求めるのは理解を得にくい。ポイント付与による販売促進にも限界があるだろう。低価格化に向けた物流網整備や表示統一化へ、自ら重点投資することこそが本筋なのではないか。