強豪校の打線を封じるお手本のような快投だった。三沢商の右腕野田海晴は横手から繰り出す緩急自在の投球で、光星打線を散発4安打と完全に沈黙させた。延長十二回、3時間18分に及んだ炎天下の大熱戦。「コースを突いて打たせて取る」。最後まで自らのスタイルを貫き、大一番でチームに大金星をもたらした。
最初の試練が訪れたのは三回。2四死球などで1死満塁とされ、加角翔太に先制の中犠飛を許した。畳み掛けられると、序盤で大きく流れを失いかねない局面。それでも「1点なら味方が取ってくれる」。次打者を落ち着いて左飛に打ち取り、最小失点でしのいだ。
以後はコースを丁寧に突き、切れのあるスライダーやシンカーを低めに集中。打ち気にはやる光星打線のタイミングをことごとく外し、相手のスコアボードにゼロを並べ続けた。
七、八、十回は無死の走者を背負うピンチを迎えたが、「抑えればチームを勢い続けられる」。内野の堅守にも支えられて無失点でしのぎ切り、味方のサヨナラ勝ちへの流れを呼び込んだ、
終わってみれば、芯で捉えられた打球はほとんどなく、築いた凡打の数は16のゴロと14の飛球。経験豊富な相手エース中川優と互角に渡り合い、息詰まる投手戦を制した。
29年の歳月を経て、聖地・甲子園の土を踏む三沢商ナイン。「感謝の気持ちを込めて低目を突きたい」。全国の強豪にも的を絞らせぬ投球で、着実にアウトを重ねるつもりだ。
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2015年夏季県大会・決勝 八学光星 VS 三沢商[/right]