【校則見直し】生徒主体で広がる動き 対話後押し、民主主義学ぶ機会に

 長野県松本市が開いたフォーラムで互いの校則について話し合い、課題を指摘する市内の生徒たち=2020年11月(同市提供、画像の一部を加工しています)
 長野県松本市が開いたフォーラムで互いの校則について話し合い、課題を指摘する市内の生徒たち=2020年11月(同市提供、画像の一部を加工しています)
頭のてっぺんからつま先まで、細かく子どもたちを縛ってきた校則を、児童生徒が主体となって見直す動きが広がりつつある。NPO法人や教育委員会が、子どもと教職員らの対話を後押しするケースも出てきた。専門家は「学校は子どもも当事者。民主主義の根幹を.....
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 頭のてっぺんからつま先まで、細かく子どもたちを縛ってきた校則を、児童生徒が主体となって見直す動きが広がりつつある。NPO法人や教育委員会が、子どもと教職員らの対話を後押しするケースも出てきた。専門家は「学校は子どもも当事者。民主主義の根幹を学べる」と評価する。[br][br] ▽議論重ね[br] 「廃止したい校則を選んで」。福井市立藤島中の生徒会は2019年5月と20年6月、全校生徒を対象にアンケートをした。[br][br] 生徒集会やクラスで議論を重ねて投票も実施。「眉毛の上」と決められてきた前髪の長さを「目にかからない程度」に変更した。「下校時の服装は制服のみ」は「体操服やTシャツも可」に、「飲み物は原則水筒のみ」は「ペットボトルも可」に見直した。生徒指導主事の山本浩史教諭は「学校生活の在り方を生徒自ら考えることで自立力を養える」と話す。[br][br] 長野市立桜ケ岡中でも昨夏、生徒会アンケートで「靴下は白色、女子はハイソックスのみ」の校則に「汚れが目立ち洗濯でも落ちない」との意見が相次いだ。生徒を交えた協議の末、白のほか黒や紺色、グレーを認め、長さも自由に。生徒会の3年生、田中市伍さん(14)は「校則には矛盾もある。変えたことで過ごしやすくなった」。[br][br] ▽口つぐむ生徒[br] 校則制定の裁量は校長にあるとされる。日本は1994年、児童らの意見表明権を定める「子どもの権利条約」を批准したが国連は度々、対応改善を勧告。2010年には「学校が児童の意見を尊重する分野を制限している」と懸念を示した。[br][br] 「生徒総会は校則を話し合う場じゃないと先生にくぎを刺された」「校則に意見すると『内申書に響くぞ』と言われ口をつぐんでしまう」。福岡県弁護士会が福岡市内の中学を対象に昨年実施した調査では、子どもたちが議論に持ち込みづらい実態が浮かんだ。[br][br] 日本では子どもの権利主張を「わがまま」と見なす風潮が根強い。弁護士会は議論への「不当な抑圧」を問題視し、「校則見直しには生徒の意見の反映が不可欠」とする意見書を県・市教委などに提出した。[br][br] ▽対等に[br] トップダウンの押し付けではなく、対話重視のルール作りを後押しする動きもある。認定NPO法人カタリバ(東京)は、岩手県立大槌高の取り組みを支援。有志の生徒と教職員による「校則検討委員会」で必要なルールとは何かを議論し「ツーブロック禁止」規定の廃止などにつなげた。[br][br] 熊本市では市教委がかじを取り、4月から校則制定・変更への児童生徒の参画を義務化。地毛の色に学校の承認を必要とするなど人権侵害につながる規制は「必ず改定」するよう求め、校則の公開を促すガイドラインを策定した。長野県松本市は、市内の生徒らが互いに校則を比べ合い課題を検討する場を設けた。[br][br] 熊本市教育委員の苫野一徳・熊本大准教授(教育学)は「ルールは本来、個人を制限するのではなく自由を保障するためにある」とし、学校には子どもを信頼して見守る姿勢を求める。児童生徒と教職員が「対等な立場で対話する機会を継続的につくるべきだ」と話した。 長野県松本市が開いたフォーラムで互いの校則について話し合い、課題を指摘する市内の生徒たち=2020年11月(同市提供、画像の一部を加工しています)