【国軍、北角さん解放】「独自パイプ」辛くも面目 続く弾圧、対話奏功せず

 フリージャーナリスト北角裕樹さんを巡る経過(写真はロイター、デモ参加者提供)
 フリージャーナリスト北角裕樹さんを巡る経過(写真はロイター、デモ参加者提供)
ミャンマーで収監中だったフリージャーナリスト北角裕樹さん(45)が26日ぶりに解放された。国営メディアは「日本との友好関係」を考慮したと指摘。国軍との「独自のパイプ」を強調してきた日本外交は辛うじて面目を保った。ただ、クーデターに抗議する市.....
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 ミャンマーで収監中だったフリージャーナリスト北角裕樹さん(45)が26日ぶりに解放された。国営メディアは「日本との友好関係」を考慮したと指摘。国軍との「独自のパイプ」を強調してきた日本外交は辛うじて面目を保った。ただ、クーデターに抗議する市民への弾圧は今も続く。制裁を科さず、対話により情勢打開を目指す日本の戦略は奏功していない。[br][br] ▽決意[br] 北角さんは2014年からヤンゴンに住み、日本語情報誌の編集長を経てフリーで活動していた。大手商社、日本経済新聞の記者から、公募で大阪市立中学の校長も務めた異色経歴の持ち主。今年2月のクーデター後のデモ取材中、治安当局に一時拘束された。[br][br] それでも「前を向こうとするミャンマー人に触れることで頑張ろうと思う」と語り、取材を続ける決意を示した。「虚偽ニュース」の流布容疑で逮捕されたのは、その3日後の4月18日だった。[br][br] ▽要請[br] 「ミャンマー国民和解担当日本政府代表の要請に応じた」。14日付の国営紙は、軍政の最高意思決定機関「国家統治評議会」の声明を掲載。日本との将来の関係を鑑み、解放を決めたと強調した。わざわざ言及した政府代表とは、日本財団の笹川陽平会長だ。[br][br] 笹川氏は13年から政府代表を務め、国軍と少数民族武装勢力の和平交渉を後押し。クーデター前はアウン・サン・スー・チー氏とも会談を重ねた。水面下で軍政側に働き掛けたのは間違いない。[br][br] 現地語に堪能な丸山市郎・駐ミャンマー大使も収監先を訪れ、繰り返し早期解放を求めてきた。その結果、事態は13日に「急展開」(外務省幹部)。解放方針が日本側に伝わったのは、国営テレビが報じる直前だった。政府関係者は「日本の持つパイプが生きている証拠だ」と胸を張る。[br][br] ▽沈黙[br] ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」によると、弾圧による死者は788人に上り、4千人近くが拘束中。日本は米欧が科す制裁に同調せず、各国大使が報道の自由を求め、連名で出した声明にも加わらなかった。[br][br] だがパイプに頼る独自姿勢は疑問視もされる。都内の日本財団ビル前では4月下旬、在日ミャンマー人らのデモがあった。国軍高官を日本に招いてきたことで、軍政寄りと見なされたためだ。[br][br] 笹川氏は13日のブログで「覚悟をもって任務を全うするため、あえて『沈黙の外交』を堅持する」とつづり、取材に応じていない。国軍を非難しないことで批判されているとしながらも、反論はせず、問題解決を探ると強調した。(ヤンゴン、バンコク、東京共同) フリージャーナリスト北角裕樹さんを巡る経過(写真はロイター、デモ参加者提供)