【ワクチン100万回接種】焦る首相、難路必至 予約トラブル続出、地方に不安

 新型コロナワクチンを巡る主な経過と首相発言(写真入り)
 新型コロナワクチンを巡る主な経過と首相発言(写真入り)
菅義偉首相が打ち出した新型コロナウイルスワクチン「1日100万回接種」実現は難路が待ち受ける。目標とする高齢者接種の7月末完了に必要だとして、数字ありきで精査なく決まったのは否めない。政府の号令で「7月完了」の市区町村が86%まで積み上げら.....
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 菅義偉首相が打ち出した新型コロナウイルスワクチン「1日100万回接種」実現は難路が待ち受ける。目標とする高齢者接種の7月末完了に必要だとして、数字ありきで精査なく決まったのは否めない。政府の号令で「7月完了」の市区町村が86%まで積み上げられ、焦る首相の「前のめり感」だけが目立つ。予約システムでトラブルが続出する中、地方の現場の不安が増すのは必至だ。[br][br] ▽上滑り[br] 「決して不可能な数字ではない」。10日の自民党役員会。首相はこう強調し、100万回接種への意欲をあらわにした。[br][br] 新型コロナ緊急事態宣言の効果を疑問視する声が出る中、感染抑止策を巡る首相の関心はワクチンに集中している。「感染者自体を減らすより、ワクチンで役所を動かす方が確実だ」。国民の行動変容の促進と異なり、官僚掌握は得意分野と言わんばかりに、首相は周囲に自信を示した。[br][br] ただ首相の意気込みは上滑り気味だ。1日100万回を表明したのは7日の記者会見。季節性インフルエンザのワクチン接種が1日約60万回実施されているとの主張が「根拠」だ。首相は6日午前に「突然」(政府筋)、これらを発表すると明かし、担当者らを驚かせた。複数の閣僚は「70万回で十分だ」と提案したが、首相は押し切った。政府高官は「100万回の方が切りがいいからではないか」と説明する。[br][br] ▽隔たり[br] 高齢者接種を巡る政府の調査で、全国1741の市区町村のうち1490が、7月末までに終えられる見込みと回答した。総務省は「自治体の決意表明だ」とするが、純粋な意向とは言い難い。当初は困難と答えた自治体に再検討を促すなど、ぎりぎりまで数字を積み増す「調整」(同省幹部)が行われたからだ。閣僚の一人は「結果に疑問が残る」とつぶやく。[br][br] 首相の旗振りに、関係府省では困惑が広がる。厚生労働省筋はコロナワクチンに関し「配送や温度管理が特殊で、インフルエンザワクチンより難易度が高い」と指摘。インフルワクチンより多く接種できると考えるのは短絡的というわけだ。11日の高齢者接種は全国でわずか約6万1千回。現実との隔たりは大きい。[br][br] 自衛隊が接種を担う東京都内の大規模接種センターに関しても、官邸と防衛省の間で温度差がにじむ。官邸筋は「1日1万人打てる」と期待。同省関係者は「数字が先走るのは避けたい。無理をして、万が一の事態を起こしたくない」と予防線を張る。[br][br] 自治体側も戸惑いを隠さない。静岡市の担当者は100万回接種に関し「静岡でどれだけ打てばいいのか。国から正式な依頼もない」と語った。[br][br] ▽楽観できず[br] 予約システムのトラブルも100万回接種の達成に影を落とす。12日に東京都狛江市などで通信アプリLINE(ライン)を使ったシステム障害が発生。防災行政無線で市民に復旧状況を知らせるなど対応に追われた。担当者は「障害が起きたのは予約開始前。不幸中の幸いだった」とした。[br][br] 10日には大阪府茨木市で別のトラブルが起きた。市は120人の予約を受け付ける予定だったが、前日の9日夜に徹夜覚悟で会場に並んだ市民に整理券を配布。10日午前に訪れた人たちから不満が爆発した。市は同日の予約受け付けを一時中止せざるを得なくなった。[br][br] 100万回接種は、予約システムや実際の接種について、国と自治体の態勢が完全に整うことが前提となる。「全く楽観できない」。厚労省幹部はこう本音を吐露した。 新型コロナワクチンを巡る主な経過と首相発言(写真入り)