森友学園への国有地売却を巡り公文書改ざんを強いられ、自殺した財務省近畿財務局元職員の赤木俊夫さんがまとめた文書「赤木ファイル」の存在を国が初めて認め、来月、開示される見通しになった。[br][br] 赤木ファイルには財務省の決裁文書が改ざんされた経緯、指示系統などが詳しく記されているとみられる。赤木さんの妻雅子さんが、夫は自殺に追い込まれたとして昨年3月、国などを訴えた損害賠償請求訴訟でファイル提出を求めていた。[br][br] 国はファイルの存否すら回答せず、情報開示に後ろ向きな姿勢が批判されたが、裁判所の要請でやっと提出に応じた。開示されれば、公文書改ざんという国民への背信行為や、赤木さんの死の真相に迫る手掛かりが得られるかもしれない。 森友問題にはなお未解明の点が多い。真実を明らかにするためにも、赤木ファイルの全面的な開示を求めたい。[br][br] 2017年2月、大阪府豊中市の国有地が8億円余りも値引きされ、森友学園に売却されたことが表面化し、国会などで大問題になった。学園が開校を予定していた小学校の名誉校長に安倍晋三前首相の妻昭恵氏が一時、就任していたことから特例的な払い下げとの関わりが注目され、安倍氏は自分や昭恵氏が関係していたら首相も国会議員も辞めると国会で明言した。公文書改ざんはこの発言の直後に始まり、昭恵氏や政治家と関連する記述が削られるなど14件の文書が改ざんされた。[br][br] 財務省の調査報告は、当時の佐川宣寿理財局長が改ざんの方向を決定づけたとした。だが佐川氏が誰かの意向を受けていなかったかや、犯罪にもなり得る行為を進めた動機など詳細は分かっていない。検察の捜査でも関係者は不起訴とされ、全容は不明なままだ。[br][br] ファイルの内容は改ざんの過程を整理した文書や財務省と近畿財務局との間のメールなどで、詳細な指示命令など改ざんの実態を示す事実を含む可能性もある。国は個人情報保護で一部黒塗りするというが、異例の土地取引から公文書改ざんに至った疑惑の解明には基本的に全面開示が欠かせない。加えて第三者による再調査も必要だろう。[br][br] 近年、公文書の廃棄など政府に対する国民の信頼を揺るがす問題が続発し、中でも森友文書の改ざんは象徴的な不祥事だ。赤木さんは抵抗しながらも改ざんに関わった苦悩を生前、手記につづっていた。疑惑のすべてを明らかにすることが赤木さんの無念を晴らす道ではないか。