トヨタ自動車の2021年3月期連結純利益は2兆円超で、前期を上回った。新型コロナウイルス流行下でも新車販売で順調にシェアを伸ばし、3年連続赤字を見込む日産自動車など他社との優勝劣敗が鮮明だ。自動車業界では半導体不足に加え、原材料高といったリスクも浮上。巨額の開発費がかかる電動化の競争で生き残るため「稼ぐ力」の改善が急務となる。[br][br] ▽お家芸[br] 「リーマン・ショック以降、固定費を含めた原価を落とせた」。トヨタの近健太最高財務責任者(CFO)は決算会見で好業績の要因を説明した。生産ラインの効率化を進め、利益を出すのに必要な販売台数を20年3月期から数十万台引き下げたという。お家芸のコスト削減策「カイゼン」が奏功した。[br][br] 他社が新型車の投入に出遅れる中、売れ筋のスポーツタイプ多目的車(SUV)の品ぞろえ拡充に注力し、国内や米中で販売が好調だったことも業績を支えた。20年度の国内新車販売のシェアは、トヨタが前年度比1・6ポイント増の31・9%。ホンダは0・5ポイント減の13・2%、日産は0・3ポイント減の10・3%と、トヨタの新車攻勢で落ち込んだ。[br][br] 近氏は「投資能力を生むためにも(今年は)大事な年だ」とさらなる収益力改善に気を引き締める。[br][br] ▽足かせ[br] 各社は年明け以降、半導体不足による生産の一時停止が足かせとなり、トヨタの背中が遠のいている。日産が11日発表した21年3月期連結純損益は4486億円の赤字となり、22年3月期も600億円の赤字を予想。減産で販売を伸ばし切れず、レアメタル(希少金属)の価格高騰も収益を圧迫する。[br][br] 三菱自動車の21年3月期は3123億円の巨額赤字に陥り、SUBARU(スバル)は純利益が半減した。ホンダは5月も国内工場の一時停止を余儀なくされた。[br][br] 東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは、半導体不足で各社の生産が停滞し「国内外で新車需要は旺盛だが、造りたくても造れない」と指摘する。[br][br] 世界では温室効果ガス削減の流れが加速し、各社は排ガスを出さない電気自動車(EV)などの開発を迫られている。次世代技術車は研究費用がかさむ上、ソフトウエアに精通する人材の獲得に資金が必要で「各社は頭を悩ませている」(杉浦氏)という。