【緊急事態宣言延長】都内、休業範囲でドタバタ劇 人出抑制阻害リスクも

 緊急事態宣言延長後の東京都の措置
 緊急事態宣言延長後の東京都の措置
新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言が12日から延長される直前に、東京都内の施設の休業範囲を巡って混乱が生じた。国立の博物館や美術館は再開から一転、休館継続の方針。百貨店は営業する売り場の範囲にばらつきが出そうだ。国と都の方針にずれがあるた.....
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 新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言が12日から延長される直前に、東京都内の施設の休業範囲を巡って混乱が生じた。国立の博物館や美術館は再開から一転、休館継続の方針。百貨店は営業する売り場の範囲にばらつきが出そうだ。国と都の方針にずれがあるためだが、ドタバタ劇は市民への誤ったメッセージとなり、人出抑制の障害となるリスクをはらむ。[br][br] ▽整合性[br] 「感染リスクが低く、再開を前提に準備してきた」。萩生田光一文部科学相は11日の記者会見で、国立博物館などを12日から再開する方針だったと強調した。10日夜に都から休館継続の正式な要請があり「合理的な説明を求めている」と明かした。[br][br] 都によると、政府が宣言延長を決めた7日、文化庁から再開するとの連絡があった。人の流れを抑制する観点から休館継続を求めたが、文化庁は科学的根拠を示すよう求めたほか、人数制限を設けて劇場などの営業再開を都が認めたこととの整合性が取れないと応じなかった。その後、事務レベルの協議は平行線をたどったという。[br][br] 最終的には休館継続に落ち着いたものの、「感染拡大を抑えたい思いは同じ」(萩生田氏)はずの政府と都の足並みの乱れが露呈した。[br][br] ▽線引き[br] 政府は宣言延長に伴い、百貨店や映画館といった千平方メートルを超える大型施設への要請を休業から営業時間の短縮に緩和した。都は独自の判断でそうした施設に休業を求めた一方、劇場や遊園地は時短営業を認めた。 この線引きに各業界から困惑の声が漏れている。都内の映画館関係者は「感染防止策が評価されないなら、一体何をすればいいのか」と憤る。[br][br] 大相撲夏場所は4日目の今月12日から、上限を約5千人とした上で観客を入れて実施する。ただ感染状況が見通せないため、4月27日に停止した12日以降の入場券販売は再開しなかった。日本相撲協会の芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「感染者数が増えている。チケットを販売する状況ではない」と対応の難しさをにじませた。[br][br] ▽さや当て[br] 都が「生活必需品」売り場以外の休業を要請している百貨店では、都内の店舗で売り場を拡大する動きが広がる。[br][br] 高島屋は12日から主力の婦人服や紳士服の販売を再開。大丸松坂屋百貨店も介護用品売り場などを営業する。松屋も下着やリビング雑貨を新たに販売する。同社の広報担当者は「顧客の要望イコール生活必需品という認識。感染対策を徹底し、お客さまを迎えたい」と話した。[br][br] 一方、ある百貨店関係者は「取引先を倒産させないための判断でもある。既にそういう局面にきている」。別の関係者も「経営的に厳しく、少しでも収益を確保したいのは各社共通の思いではないか」と明かした。[br][br] 都は「生活必需品の基準を設けるのは困難」との立場。業界からは「線引きが難しいため足並みもそろわず、顧客にも分かりづらい」と不満の声が出ている。[br][br] 京大の依田高典教授(行動経済学)は「政府と自治体が休業を巡ってさや当てをしている現状を見れば、国民の行動は今よりもさらに緩む可能性がある」と指摘する。「人間は自分に都合の良い解釈をしたがるものなので、変わらない自分に対して『政府が営業しても構わないと言っているから』という言い訳をしやすくなる」とも述べた。 緊急事態宣言延長後の東京都の措置