天鐘(5月11日)

「情けは人の為(ため)ならず」の諺(ことわざ)を聞く度、誤用を警戒する“黄信号”が点滅する。20年前、文化庁が実施した国語に関する世論調査で、半数が「情けをかけるとその人のためにならない」と誤答。想定以上の結果となった▼正解は「人に親切にし.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 「情けは人の為(ため)ならず」の諺(ことわざ)を聞く度、誤用を警戒する“黄信号”が点滅する。20年前、文化庁が実施した国語に関する世論調査で、半数が「情けをかけるとその人のためにならない」と誤答。想定以上の結果となった▼正解は「人に親切にしておけば必ずよい報いがある」(広辞苑)。正誤は共に46%。原因は報酬を狙ったような情けへの違和感と、「ならず」の解釈の相違のようだ▼断定の「なり」に打ち消しの「ず」で「―ではない」の意。情けは「人のためではない」「自分のため」と解釈すべきだ(同庁国語課)と導くが、文法解釈はややこしい。別の「情けが仇(あだ)」との混同もあるらしい▼原典は盛岡市出身の思想家、新渡戸稲造の詩。この諺に「己が心の慰めと知れ 我れ人にかけし恵は忘れても 人の恩をば長く忘るな」と続く。施した情けはわが心の慰めに―という原詩の方が分かりやすい▼辿(たど)れば『武士道』に行き着く。バイデン米大統領は新型コロナワクチンの特許権の緩和に支持を表明。特許権を一時放棄して感染が爆発する途上国でワクチンを製造、世界をコロナ禍から救済する大英断である…▼はずが先進国は開発意欲の障害になり、輸出量の強化こそ先決と反論。中ロの露骨なワクチン外交への対抗と、先進各国のお家の事情が重層的に絡み合い、きれいな答えが導けない。情けは誰のため? また誤答しそうな気が…。