【ワクチン接種】高齢者接種本格化、混乱相次ぎ現場に「諦め」

 高齢者のワクチン接種状況
 高齢者のワクチン接種状況
国内で10日、新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種が本格化した。先行した海外では既に感染者数の大幅減を達成した例もあり、政府は7月末までに対象3600万人への実施を終えるとの目標を掲げる。だが、注射を担う医師ら医療人材の確保は不十分な.....
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 国内で10日、新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種が本格化した。先行した海外では既に感染者数の大幅減を達成した例もあり、政府は7月末までに対象3600万人への実施を終えるとの目標を掲げる。だが、注射を担う医師ら医療人材の確保は不十分なまま。順番を予約するインターネット手続きは各地で混乱が続き、医療関係者からは「目標達成は困難だ」と、早くも諦めの声が出始めている。[br][br] ▽戸惑い[br] 「予約の方法が分からない」。10日朝、福島市の本庁舎には多くの高齢者が押しかけた。インターネットや電話での予約受け付けは午前9時に始まったが、不慣れな人たちを対象に市が実施するネット予約の代行サービスの希望者たちだった。[br][br] 窓口の学生アルバイトが高齢者に代わってスマートフォンなどを操作したが、予約サイトにはアクセスが殺到。予約は進まず、順番を待って数十人が行列した。担当職員は「サイトがつながらないと電話も相次いだ。状況がよく分からない」と戸惑いを隠せない。[br][br] 注射を行う人材の確保も大きな課題だ。医療関係の人材紹介を手掛けるエムスリーグループ(東京)によると、5月に入って自治体からの問い合わせが急増。4月の2倍以上になった。[br][br] 政府目標を受けて集団接種の準備を始めたり、人員を増やしたりする自治体も多いようだ。[br][br] ▽警戒[br] 政府が2回目の緊急事態宣言を全面解除した3月下旬から1カ月余り。想像以上に大きな感染再拡大(リバウンド)を生んだ主因は、感染力の強い変異ウイルスだ。[br][br] 従来のウイルスに比べて若年層が重症化する例も増えており、国立国際医療研究センターの忽那(くつな)賢志医師(感染症学)は「新しいウイルスと言えるくらい強毒化している」と警戒を呼び掛ける。[br][br] 国内各地で検出されているのは感染力が強くなる「N501Y」変異を持つ英国株などだ。国際医療福祉大の松本哲哉教授(感染症学)は「日本は対応に失敗した」と指摘する。海外で生まれた新たな変異ウイルスの上陸は、水際対策だけでは防ぎきれない。インドで猛威を振るうインド株も検出されつつある。松本教授は「対策が急務だ」と危機感を強める。[br][br] ▽焦り[br] 日本政府が接種を進めている米ファイザー製ワクチンは、変異ウイルスにも効果があるのか。英国株や日本上陸済みの南アフリカ株が多くを占める中東カタールでの調査が今月上旬、米医学誌で発表された。ファイザー製品の感染抑制効果は英国株で89・5%、南アフリカ株では75%と一定の有効性があった。[br][br] 世界最速で接種が進むイスラエルの研究チームが4月に発表した論文によると、国内での接種開始から約2カ月後に当たる2月下旬には、優先対象とされた60歳以上の8割が2回目の接種を完了。感染者はピーク時から77%減少した。[br][br] 日本では高齢者への接種開始から1カ月の時点で、少なくとも1回接種した人は対象の1%にも満たない約33万人。関係者の焦りの色は濃い。[br][br] 松本教授が診療に関わる病院では、ワクチンの配送予定が見通せないことなどから高齢者への接種開始は6月ごろの見通しだ。7月末完了の政府目標は「至難の業だ」(松本教授)という。 高齢者のワクチン接種状況