障害のある人が農業生産活動に携わる「農福連携」が注目を集めている。農業と福祉の双方にメリットが生まれる取り組みとして全国で広がりを見せており、青森県内でも、両分野の関係者が手を携える動きが目立ってきた。[br][br] 農福連携は、可能な範囲で働きたいとの思いを抱える障害者の就労機会や生きがいの場を創出するだけでなく、担い手不足や耕作放棄地の増加などに直面する農業分野の課題解決につながる可能性を秘める。全国的にさまざまな形で事業が行われており、取り組む事業者は増加傾向にある。[br][br] 八戸市で障害者の就労支援施設を運営するシュタインズも本年度、農業分野に参入した。農福連携事業として農業者と契約を結び、施設利用者を農地に派遣。作業の手伝いを通じて利用者にノウハウを習得させている。上がった利益は利用者に還元し、精神的・経済的自立への道筋も示す。[br][br] 後継者のいない農業者からは、将来的に農地を引き継ぐことも想定する。収穫した農作物の加工や販売、農家民泊の経営などの多角展開も視野に入れる。[br][br] 同社の事業で実際に利用者を受け入れた農業者は、高い満足度を示す。利用者の働きぶりに、受け入れ前は全く湧いていなかった障害者と共に働くイメージは180度覆され、今では必要不可欠な存在になっているという。双方にメリットを生み出す農福連携事業は地域の活性化にもつながる可能性があり、県内でも一層、活発化していくことに期待したい。[br][br] ただ、現時点で県内には、農業者と福祉事業所などをつないでマッチングさせる中間的な組織はない。各事業者が個々に取り組むケースがほとんどで、面でのネットワークも形成されていないのが現状だ。[br][br] 2018年度に県が実施した調査では、求職を検討する福祉事業所が204件中110件(53・9%)だったのに対し、求人を検討する農業者は810人中87人(10・7%)。福祉側の関心が高まる一方、農家側の理解や認知は十分に進んでいるとは言えず、まだまだ参入へのハードルは高いと見られているようだ。[br][br] 農福連携は、担い手の高齢化が進む県内の農業を守るための重要な一手となる。参入に当たり乗り越えるべき課題は多いが、県内でも今後一層、普及させていくためには、まずは農家側の理解促進が欠かせない。土台から体制を構築し、農業、福祉両分野への支援を強化したい。