天鐘(5月10日)

八十八夜が過ぎて、新茶のシーズンを迎えた。いつもはコーヒーや紅茶でも、この時季ならお茶という方もいるかもしれない。さわやかな香り、深い味わいに心が安らぐ▼お茶の収穫は年に3~5回行われる。中でもこの季節の「一番茶」には、うまみの成分が通常の.....
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 八十八夜が過ぎて、新茶のシーズンを迎えた。いつもはコーヒーや紅茶でも、この時季ならお茶という方もいるかもしれない。さわやかな香り、深い味わいに心が安らぐ▼お茶の収穫は年に3~5回行われる。中でもこの季節の「一番茶」には、うまみの成分が通常の3倍以上含まれているという。新茶のおいしさには、やはり理由がある。飲めば一年間無病息災と言われるゆえんだろう▼そんなお茶も、今は店頭のペットボトルが幅を利かせる。そのせいか、お茶を「淹(い)れる」という言葉を知らない若者もいるらしい。急須と湯飲みではなく、工場で「作る」。これも時代の流れかもしれない▼お茶に関する言葉に、「二番煎じ」もある。一度使ったお茶の葉を再び煎じる。当然、自慢の風味は落ちてくる。それは重ねるほど元から遠くなり、転じて同じことの繰り返し、新鮮味がない意味にも使われる▼政府の緊急事態宣言に「二番煎じ」が浮かんできた。3度も繰り返すうちに、切迫感も緊張感もなくなっている。感染者は減るどころか、日々増え続けている。苦肉の期限延長はどれだけの効果を煎じ出せるか▼連休も明けて、再び世の中が動き出した。大きく深呼吸をしたい時候だが、思うように心が晴れない。自分でできるコロナ対策は、変わらずマスクや手洗いに違いない。気分転換に新茶でも一服し、いま一度、鉢巻きを締め直したい。