【陸奥湊駅前再整備】再生の“ラストチャンス” 鍵は集客ソフト事業の充実

再整備構想が浮上した陸奥湊駅前地区。八戸市営魚菜小売市場のリノベーションに合わせ、民間市場も大規模改修を検討している=5月上旬、八戸市湊町
再整備構想が浮上した陸奥湊駅前地区。八戸市営魚菜小売市場のリノベーションに合わせ、民間市場も大規模改修を検討している=5月上旬、八戸市湊町
「八戸市民の台所」として親しまれてきた八戸市湊町のJR陸奥湊駅前地区で、再整備構想が浮上した。かつて一帯は魚介類を取り扱う業者が軒を連ね、多くの人でにぎわったが、近年は集客力の低下が叫ばれて久しい。民間主体で推進する今回の構想は、これまで幾.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 「八戸市民の台所」として親しまれてきた八戸市湊町のJR陸奥湊駅前地区で、再整備構想が浮上した。かつて一帯は魚介類を取り扱う業者が軒を連ね、多くの人でにぎわったが、近年は集客力の低下が叫ばれて久しい。民間主体で推進する今回の構想は、これまで幾度の計画見直しを経験した地元にとって、再生を図る“ラストチャンス”だ。建物改修のみにとどまらず、差別化した商業機能の構築や魅力的なテナント誘致、人を呼び込むソフト事業の充実が再興の鍵を握っている。[br][br] 昭和期に魚介類販売の拠点だった陸奥湊には、食材を仕入れる小売り・飲食業者や買い物客が集まった。[br][br] だが、生鮮食品を扱うスーパーが多数立地して客足は遠のき、八食センターとも競合。地場の海産物を販売する産直施設も増え、競争力は徐々に低下した。[br][br] こうした状況の中、市は2006年度に駅前地区の再開発事業推進計画を策定。地権者を中心に民間主導の再開発が検討されたが、事業費は20億円近くに上り、地元負担がネックで計画は頓挫した。地権者らは10年度、事業規模の縮小を打ち出したものの、実現には至らなかった。[br][br] その後、現在の市営魚菜小売市場(1967年建設)は老朽化が進み、16年度に建て替えを核とした駅前地区の再開発計画が浮上。市が耐震診断の結果などを踏まえて建物を改修するリノベーションに方針転換したため、官民一体の計画を見込んでいた地元側は再検討を余儀なくされたが、この機運を逃さないように実現可能な方策を探った。[br][br] 今回の構想を主導する「陸奥湊駅通り地区まちづくり協議会」の石黒一之事務局長は「今後は事業主体となるまちづくり会社の立ち上げが鍵になる」と説明。資金調達に加え、事業に携わる若い世代の取り込みをポイントに挙げる。[br][br] 陸奥湊エリアが再生を果たすには、魅力的な商業空間の構築と新たな客層の開拓が不可欠だ。魚菜小売市場は、最盛期に100店舗以上あった出店数が減少の一途をたどり、現在は二十数店舗にとどまる。周辺の民間市場も空洞化が進んでおり、高齢化問題を抱える店子の事業継続や新たなテナント誘致も課題となる。[br][br] 観光利用の玄関口である陸奥湊駅が今年3月に無人化されるなど、地区を取り巻く環境は厳しい。紆余曲折を経験した地元関係者や店子の胸中には「今度こそ実現してほしい」「本当に人が戻って来るのか」と、期待と不安が入り交じる。[br][br] 一方、協議会は再整備への弾みとするため、昨年から魚菜小売市場などでイベントを企画している。企画・広報コーディネーターの大粒來里紗さんは「独特の空気感がある特徴を生かし、陸奥湊を八戸のまちや情報発信の拠点にしたい。店子の皆さんを支援することも大事にして活動していく」と語った。再整備構想が浮上した陸奥湊駅前地区。八戸市営魚菜小売市場のリノベーションに合わせ、民間市場も大規模改修を検討している=5月上旬、八戸市湊町