天鐘(5月7日)

江戸中期に活躍した文人画家の池大雅(いけのたいが)。日本史の教科書に載っている国宝「十便十宜(じゅうべんじゅうぎ)図」など軽妙な筆致の南画で知られるが、53年の生涯を通じてお金に触れることがなかったという▼子供の頃から神童と呼ばれ、日本の山.....
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 江戸中期に活躍した文人画家の池大雅(いけのたいが)。日本史の教科書に載っている国宝「十便十宜(じゅうべんじゅうぎ)図」など軽妙な筆致の南画で知られるが、53年の生涯を通じてお金に触れることがなかったという▼子供の頃から神童と呼ばれ、日本の山河を洒脱(しゃだつ)で変化に富んだ画風で描き、独自の世界観を確立した。かと言ってお高くとまっていた訳でもなく、気が乗らない時はいくらお金を積まれても筆を執らなかった▼大雅は30代から指導的立場で画料はいい値だった。妻の玉瀾(ぎょくらん)も絵師で、2人の画料は玄関先の水瓶(みずがめ)に入れてもらうシステム。夫婦共に大雑把でその中身を知らず、商人は画材や米代相当分を水瓶から頂戴していた▼瓶が“プリペイドカード”の代わりだった。夫婦は瓶に手を突っ込むことなく、俗塵(ぞくじん)にまみれず自由に創作活動を続けた。だが常人はそうはいかない。後生大事に財布を懐に入れ、中身に執着する毎日である▼悲しいかな、“お足”を介して新型コロナに感染する可能性があるという。西村康稔(やすとし)経済再生相が「お札に付いたウイルスは1週間(豪州では4週間説)生きている」と警告。今更だが手指消毒の徹底を推奨した▼銅を含む小銭には殺菌効果がある。中国は紙幣に紫外線を照射しているとか。変異株で緊急事態宣言は延長戦にもつれ込む。飛沫(ひまつ)も怖いが接触もある。夜な夜な指に唾を付けてお札を繰り返し数える癖のある人は要注意だ。