「病気や障害への理解広がって」 難病・PWSと闘う3歳男児と杉山さん夫妻(八戸)

息子の成長に喜びをかみしめる杉山貴治さん(右)。「難病への理解がもっと広まってほしい」と願う=4月25日、八戸市
息子の成長に喜びをかみしめる杉山貴治さん(右)。「難病への理解がもっと広まってほしい」と願う=4月25日、八戸市
約1万5千人に1人の割合で出生する難病「プラダー・ウィリ症候群(PWS)」と闘う3歳の男の子と支える家族が八戸市にいる。杉山貴治さんの息子は、生まれつき筋力が弱く、生まれてすぐに産声を上げることすらできなかった。今では元気いっぱいに走り回る.....
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 約1万5千人に1人の割合で出生する難病「プラダー・ウィリ症候群(PWS)」と闘う3歳の男の子と支える家族が八戸市にいる。杉山貴治さんの息子は、生まれつき筋力が弱く、生まれてすぐに産声を上げることすらできなかった。今では元気いっぱいに走り回るまでに成長したものの、世間には知られていない病気ということもあり、育児について相談できる場所がなく悩んだ時期もあった。杉山さんは「病気や障害への理解がもっと広まってほしい」と願いを込める。[br][br] 難病情報センターによると、PWSの症状は摂食障害や知的障害など多岐にわたり、年齢に応じて変化する。新生児期は呼吸やほ乳に障害があるものの、成長するにつれて改善。幼児期からは食欲の抑制が難しくなるため過食や肥満になりやすく、次第に知的発達の遅れが顕著になる。[br][br] 原因は染色体異常による先天性のものと考えられ、根本的な治療法はない。たいていは療育支援や徹底した栄養管理、成長ホルモン療法が行われる。[br][br] 杉山さんの息子は出生直後、産声を上げる力がなく、さらに吸う力も弱いためにミルクが飲めず、生後2~3カ月までは経管栄養で命をつないだ。 PWSと診断された時、杉山さん夫妻の頭の中は真っ白になった。「息子はこれから先、どうなってしまうのか」。不安が押し寄せた。[br][br] わが子の成長が励みになった。大きくなるにつれて、生後間もない頃の症状は改善した。一方、夫妻を悩ませたのが相談できる場所がないことだった。行政手続きでも、児童福祉や障害福祉関係の窓口を行ったり来たり。保育施設を探す時も「聞いたことがない病名」という理由から、何十件も受け入れを断られた。[br][br] 「ただでさえ、病気のことで頭がいっぱいなのに、相談できる場所もないとなると、親として精神的なダメージは大きい」と杉山さん。ようやく決まった受け入れ先では病名ではなく、実際に息子の様子を見て判断してくれたことが、うれしかった。[br][br] 全国には療育などの専門的な支援や周囲のサポートによって、小学校の普通学級で教育を受けている子どもや、成人後に芸術分野で活躍するPWSの人もいる。情報が少ない中、病気と向き合う家族にとって大きな希望だ。[br][br] 杉山さんの息子は最近、歌が上手になり、保育施設では友達もできた。「呼吸もほ乳もできなかった頃の絶望を考えると、確実に成長してくれている」と喜びをかみしめる夫妻。「将来のことよりも、今、3歳になった息子のかわいい時間を楽しみたい」。優しく結んだ腕の中で、屈託のない笑顔がはじけた。息子の成長に喜びをかみしめる杉山貴治さん(右)。「難病への理解がもっと広まってほしい」と願う=4月25日、八戸市