岩手県の三陸沿岸北部と内陸部を結ぶ、新たな横軸の自動車専用道路「北岩手・北三陸横断道路(仮称)」の整備実現を目指す動きが広がっている。県内では、2019年3月に花巻―釜石間を結ぶ東北横断自動車道釜石秋田線(釜石自動車道)、21年3月に宮古―盛岡間をつなぐ宮古盛岡横断道路が、東日本大震災の復興支援道路としてそれぞれ全線開通した。県南と県央の横軸道が相次いで完成した一方、県北は急勾配や急カーブの多い国道281号の改良にとどまっており、関係者は「次こそは県北に」との思いを強くしている。[br][br] 「八戸市とは近くなったが、県都の盛岡市とは遠いまま。県が必要性を認めてくれないなら、われわれは岩手県にいる意味がない」。[br][br] 3月上旬、野田村議会の一般質問。小田祐士村長は、三陸沿岸道路の整備で八戸とのアクセスが大きく向上した点に触れた上で、県北の横軸道整備に対する思いを強い口調で語った。[br][br] 県北には、現時点で新たな横断道路の整備計画はない。沿岸部と内陸部の往来では主に、久慈―盛岡間を結ぶ国道281号が使われるが、山間部を縫うように走る交通の難所だ。震災後に改良工事は進められたものの、移動にはなお長い時間を要する。[br][br] 県北の道路網改善に向け、久慈、八幡平、葛巻、岩手、野田、普代の6市町村は18年に、野田―八幡平を結ぶ自動車専用道路の整備を目指す整備促進期成同盟会を結成。20年には盛岡以北の13市町村も加わり、県内19市町村が連携して運動を強めていくことになった。[br][br] 同盟会の副会長を務める小田村長は「大きな活動となりつつある。国の計画に載せるため、まずは県に必要性を認めてほしい」と主張。同盟会事務局・葛巻町の中山優彦政策秘書課長も「震災から10年が過ぎ、県南と県央に横軸道ができた。県北もいよいよ、本格的に声を上げていいタイミングだ」と訴える。[br][br] ただ、整備に向けたハードルは高い。同盟会が昨年12月に実施した要望に対する県の回答は「当面は実現できない」。課題として、国道281号とルートが並行し、機能が重複することや、膨大な事業費が見込まれることを挙げた。[br][br] 県道路建設課の北館康弘計画調査担当課長は、取材に「県北の道路ネットワークの強化に対する重要性は強く認識しているが、現時点では要望への回答と同じ状況」と説明。「県北の道路の在り方について、関係市町村と引き続き、幅広く検討していく」と慎重な姿勢を示す。