3回目となる新型コロナウイルスの緊急事態宣言が4都府県に発令されてから1週間。大型連休に入った行楽地などの人出は発令前より減ったものの、昨年春の1回目の宣言時からは大幅に増え、人の接触を抑える効果は限定的だ。感染状況が大きく改善せず11日までの期限が延長されれば、休業などを強いられている関連業界の苦境はさらに深まる。[br][br] ▽ジレンマ[br] JR鎌倉駅から鶴岡八幡宮へ続く「小町通り」(神奈川県鎌倉市)では1日、多くの観光客らが行き交った。市職員が食べ歩きをしないよう呼び掛けたが、缶ビールを片手に歩く人や、食べ物を路上でほおばる姿も見られた。[br][br] 「首都圏や関西圏からもお客さんが来て満室だ。宣言でキャンセルもあったが、すぐ次の予約で埋まった」と話すのは、富士山を望む山梨県富士吉田市の全室コテージ型施設「ふようの宿」の男性支配人。全国屈指の温泉地、静岡県熱海市のあるホテルも、様子見をしていた客による「直前の駆け込み予約がかなりある」という。[br][br] 青森県と秋田県にまたがる十和田湖近くの宿泊施設では例年の6割ほどの客足。関係者は「少しほっとしている」としつつ、宣言やまん延防止等重点措置が「万一、これ以上広がったらどうしようかと心配でならない」とのジレンマを抱える。[br][br] ▽前年比3倍も[br] スマートフォンの位置情報を基にNTTドコモが算出したデータによると、1日の人出は全国の主要駅や繁華街計95地点のうち札幌駅、東京・新宿駅、横浜中華街駅、京都・四条河原町付近、福岡・天神など70地点で、今回の宣言直前の土曜日である4月24日の水準を下回った。[br][br] それでも、最初の宣言期間を含む昨年5月の休日平均との比較では全地点で大幅に増えた。北海道・新千歳空港で約3倍、横浜駅で約3・3倍、大阪・難波で18%増、福岡・博多駅で約2・5倍、沖縄・国際通りで25%増となり、95地点の平均では77%の増加だった。[br][br] 地方の観光地では、宣言地域などからの県境をまたぐ移動が昨年より増えたとみられる。宣言の効果は一定程度あったものの昨年には及ばず、発令を重ねるにつれて弱まっていることが分かる。[br][br] ▽悲鳴[br] かき入れ時を再び直撃した宣言に、首都圏の百貨店関係者は「コロナで人を集められないどころか、休業は本当に痛い」とため息をつく。大型店の売り上げは1日数億円に上り、政府が決めた協力金は「補塡(ほてん)にはほど遠い」。宣言地域で大半の店舗を休業した居酒屋チェーンの関係者も「通常は大人数の予約が入る時期。感染防止とはいえ苦しい」と悲鳴を上げる。[br][br] 大型連休の客足は例年の1割程度だった昨年より「少しましという程度」という熊本県の阿蘇市観光協会の松永辰博事務局長(57)は「昨年借りたお金も返済しなければならず、このままでは多くのホテルや旅館が立ちゆかなくなる。行政には立ち直るすべを示してほしい」と訴える。[br][br] 厚生労働省が4月27日に開いた専門家会合では、東京などの感染者が5月3日時点でも減らないとの予測が出された。判断できるのは発令の約2週間後とされる宣言の効果について、専門家の一人は「11日の解除が前提ではなく、情報を解析して考えないといけない」と慎重な見方を示した。