天鐘(4月29日)

縄文人の平均寿命は約30歳だったと推定されている。だが、集落によっては60歳超の“高齢者”が大勢いたり、病気で歩けない若い女性が元気に暮らしていたり、生活は厳しくても共助の「福祉」は根付いていたようだ▼発掘された人骨約千体の骨や歯の摩耗程度.....
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 縄文人の平均寿命は約30歳だったと推定されている。だが、集落によっては60歳超の“高齢者”が大勢いたり、病気で歩けない若い女性が元気に暮らしていたり、生活は厳しくても共助の「福祉」は根付いていたようだ▼発掘された人骨約千体の骨や歯の摩耗程度から推定した。20代から死者が次第に増え、40~50代の熟年で半数が死亡。残る男性3%、女性9%は60歳過ぎまで生きた▼家族3世代で住み、祖父母から孫子へ生活の知恵が伝承されていた。さらに、このうち86体を解剖学者の長岡朋人さんが高精度な方法で再調査したら、「3人に1人が65歳以上」という驚くべき結果が報告された▼主な死因と思われる細菌性疾病は骨からの判別は難しいが、北海道の入江貝塚で「ポリオ人骨」が見つかっている。少女は小児麻痺で歩けなかったが、皆の支援と介護で20歳前頃まで元気に生きていたようだ▼考古学者の岡村道雄さんは著書『縄文人からの伝言』で、「縄文期の労働は4時間程度。のんびり暮らし60歳以上生きた人も多い」「ポリオ人骨は福祉の始まりを物語る」と指摘。学ぶべきは現代人であるようだ▼新型コロナの感染死が1万人を超した。病床がなく、収容先のない救急車が右往左往。自宅で息を引き取る感染者や看取りのない孤独死も増えている。縄文から1万数千年。口先だけで、共助も公助も希薄な医療福祉時代が続く。