天鐘(4月28日)

ちょうど1年前の4月、タレントの風見しんごさんを起用した新聞の全面広告をこの欄で紹介した。春の交通安全運動の期間中で、通学路の点検の大切さを呼び掛けるものだった▼今年も同じ広告を中央紙に見つけた。風見さんは2007年に長女を交通事故で亡くし.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 ちょうど1年前の4月、タレントの風見しんごさんを起用した新聞の全面広告をこの欄で紹介した。春の交通安全運動の期間中で、通学路の点検の大切さを呼び掛けるものだった▼今年も同じ広告を中央紙に見つけた。風見さんは2007年に長女を交通事故で亡くしている。失意の中でまな娘への思いを手記にまとめ、以後、各地での講演などを通じて輪禍撲滅を訴え続けている▼交通事故の犠牲者は1970年に全国で1万6千人を超えていた。当時は「交通戦争」の言葉もあった。反省と教訓の下、その後は大きな流れの中で死亡事故は減り続ける。昨年、死者は初めて3千人を切るまでになった▼そして「ついに」の感慨である。今月8日、交通事故で亡くなった人が全国で1人もいなかったことが、警察庁のまとめで分かった。68年の統計開始から半世紀余り。初めて達成した“快挙”だそうだ▼交通環境の整備、車の安全性向上、法律の厳罰化…。一つ一つの対策の積み重ねが「ゼロの日」に結びついたのだろう。そして、それは風見さんのような遺族の切なる願いや祈りが作り上げた「結晶」にも見える▼誰もが、被害者にも加害者にもなり得る交通事故。互いに一瞬で不幸の底に落とされる。「事故は当事者を選んでくれません」と風見さん。春の日差しのような「ゼロの日」を、偶然や記念日で終わらすまい。一人一人、心がけて。