【ワクチン接種】大都市での接種推進 首相焦り反映

 新型コロナワクチン接種を巡る首相らの発言
 新型コロナワクチン接種を巡る首相らの発言
菅義偉首相が大都市での新型コロナワクチン接種推進に乗り出す。猛威を振るうウイルスへの国民の不安が渦巻く中、政権内から各都道府県に配慮したワクチン配布を疑問視する声が相次ぎ、感染拡大の「震源」の都市部を重視する方針へ軸足を移す形だ。衆参3選挙.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 菅義偉首相が大都市での新型コロナワクチン接種推進に乗り出す。猛威を振るうウイルスへの国民の不安が渦巻く中、政権内から各都道府県に配慮したワクチン配布を疑問視する声が相次ぎ、感染拡大の「震源」の都市部を重視する方針へ軸足を移す形だ。衆参3選挙全敗も踏まえ、求心力回復につなげたいとの首相の焦りも反映。ただ医師確保など難題は多く、他の自治体から異論が出る可能性もある。[br][br] ▽とりで[br] 「これからはワクチンだ」。首相は3選挙から一夜明けた26日、周囲にこう漏らした。翌27日午前、岸信夫防衛相を呼び出し面会。「最後のとりで」(首相)である自衛隊を活用し、東京に大規模接種センターを設置するよう指示した。[br][br] 政権によるワクチンの配布基準は、各都道府県の公平性。首相を動かしたのは、身内からの「今の手法は正しいのか」との問題提起だった。自民党内では「全国への感染拡大の芽を摘むには、大都市集中で配るべきだ」との意見が根強かった。感染収束に手をこまねく政権の姿をさらし続ければ「国民の視線が厳しさを増す」(与党筋)との危機感が背景にある。[br][br] 難色を示す政府に業を煮やした自民幹部は、東京都の小池百合子知事に「都から要請したらどうか」と持ち掛けた。小池氏は「二階俊博幹事長とお会いしたい」と反応し、20日に会談が実現。二階氏は「火が燃え盛っているところ」への重点配分の必要性を強調すると、小池氏は「助言は大切にしたい」と応じた。[br][br] 首相の政策ブレーンで小西美術工芸社社長のデービッド・アトキンソン氏も、27日の民放番組で「日本は感染者が少ないところでもワクチンを打っている。正しいか疑問だ」と訴えた。こうした厳しい声は首相の耳に届いていたとみられる。[br][br] ▽三重苦[br] ただ実際に1日1万人もの大規模接種を行うのは大きな困難を伴う。まず人員確保がポイントになる。防衛省によると、医官らは歯科医官も含めると計約1100人、看護官は約千人(2020年3月末時点)。岸氏は27日、東京・大手町の会場では、自衛隊中央病院(東京)が中核となると説明したが、同院は地域医療を支え、コロナ患者も受け入れている。3カ月間、延べ90万人に対応できるか不透明だ。[br][br] 夏に迫る東京五輪・パラリンピックでも医療提供体制が焦点。橋本聖子前五輪相は2月、両大会を通じた約2カ月間で、合計約1万人の医師、看護師ら医療従事者が必要だとの見通しを示した。医療が逼迫(ひっぱく)する中、接種業務、五輪対応と現場は三重苦となる。[br][br] ▽混乱[br] 地方との格差も不安材料だ。65歳以上約3600万人のうち、1回目の接種ができたのはわずか約0・3%。多くの人が予約を取るにも一苦労しているのが現実だ。政府関係者は大都市重視を巡り「日本人は平等を重んじる面がある」として、各地から不満が出るのは避けられないとみる。[br][br] 変異株に対抗するには、ワクチンの早期普及が感染抑制の鍵となる。感染者増が続けば、医師確保が難しくなり接種に悪影響が出るという悪循環に陥りかねない。[br][br] 川崎市立看護短大の坂元昇学長(公衆衛生学)は大都市部でのセンター設置について「接種規模が拡大できる」と評価。ただ「人の流れが滞らないようにしないと、会場や周辺にあふれて混乱が起きるのではないか」と、問題点を指摘した。 新型コロナワクチン接種を巡る首相らの発言