【B型肝炎訴訟判決】新たな司法判断 患者の救済へ道

 B型肝炎の給付金
 B型肝炎の給付金
B型肝炎訴訟の判決で最高裁は26日、慢性肝炎の「再発」から20年以内であれば国に損害賠償を請求できるとする新たな司法判断を示した。薬事行政の失態を問う法廷闘争が始まって30年余り。国の責任が明確になった後も「発症」から20年という線引きで十.....
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 B型肝炎訴訟の判決で最高裁は26日、慢性肝炎の「再発」から20年以内であれば国に損害賠償を請求できるとする新たな司法判断を示した。薬事行政の失態を問う法廷闘争が始まって30年余り。国の責任が明確になった後も「発症」から20年という線引きで十分な補償を受けられなかった患者の救済に道を開いた。補償の要件となる裁判手続きを取っていない人も多く、政府に周知を求める声が強まりそうだ。[br][br] ▽国民感情[br] 「著しく正義に反する(福岡高裁)判決が取り消された。全面的に主張が認められた」。26日午後、東京都内で記者会見した原告代理人の武藤糾明弁護士は満面の笑みを見せた。国がこれまで薬害・公害訴訟で主張してきた「除斥期間」(賠償請求権が消滅する期間)を巡り原告に有利な解釈をしたことを「被害を時間で区切るのはおかしいという国民感情に沿った判断だ。B型肝炎にとどまらない被害救済にもつながる」と評価した。[br][br] この日の判決は、慢性B型肝炎の場合、最初の発症よりも再発の方がより病態が進行した「特異なもの」になると指摘。現在の医学では再発の理由が解明されておらず、発症時点で再発による損害の賠償を求めることは「不可能」だとも述べた。こうした病気の特質から発症時の損害と再発時の損害は「質的に異なる」とし、賠償請求権の起算点は再発時だと結論付けた。[br][br] ▽欠けたピース[br] 予防接種法が施行されたのは1948年。幼少期に受ける集団接種の現場では、注射器の交換が徹底されない状態が長年続いた。使い回しによるB型肝炎ウイルス感染の危険性が指摘されていたにもかかわらず、国が交換を義務付けたのは40年後の88年。この間、感染者は増え続けた。[br][br] 患者らが89年、国に賠償を求めて札幌地裁に提訴。最高裁は2006年、国の責任を認める判決を言い渡した。その後、同様の訴えが相次ぎ、11年に全国訴訟原告団・弁護団と国は和解に向けた基本合意書を締結。当時の菅直人首相は「心からおわびする」と謝罪した。[br][br] 12年には被害救済の特別措置法が施行され、訴訟などの裁判手続きを経れば、症状に応じて国から給付金が支払われる救済制度ができた。[br][br] ただ基本合意は、発症から20年を超えて提訴したときは除斥期間を根拠に給付金が大幅に減額される仕組みだった。原告弁護団の一人は「当時の妥協の産物で最善ではなかった。未解決の部分、欠けたピースをいつか補う必要があった」と振り返る。[br][br] ▽掘り起こし[br] 法務省によると、特措法の枠組みに基づいて提訴している原告は今年1月末現在で累計約8万5千人。このうち給付金の支給要件が認められた約6万7500人とは和解が成立している。弁護団によると、今回の原告と同様、給付金の格差は不当だと争う訴訟を起こしているのは100人超。これらの訴訟には影響を与えるとみられる。[br][br] 一方、弁護団は減額された額でいったん和解した人が救済される可能性は低いとみる。さらに厚生労働省の推計では、給付金の対象者は最大約45万人に上る。[br][br] 全国弁護団代表の佐藤哲之弁護士は「自分がB型肝炎にかかっているとは知らない『無症状』の患者が多くいるとされているのに、国の周知も対応も不十分だ」と批判し、潜在的な患者の掘り起こしを求める。 B型肝炎の給付金