【検証・緊急事態宣言】首相、五輪へ背水の陣 政権の浮沈懸けた17日始まる

 緊急事態宣言を巡る首相らの発言と五輪関連日程(似顔 本間康司)
 緊急事態宣言を巡る首相らの発言と五輪関連日程(似顔 本間康司)
菅義偉首相が3度目の新型コロナウイルス緊急事態宣言の発令に踏み切った。5月中旬からめじろ押しとなる東京五輪の重要日程を意識。期間を11日までと区切った裏には、五輪への影響を絶対避けるという「背水の陣」の決断があった。変異株の脅威を目の当たり.....
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 菅義偉首相が3度目の新型コロナウイルス緊急事態宣言の発令に踏み切った。5月中旬からめじろ押しとなる東京五輪の重要日程を意識。期間を11日までと区切った裏には、五輪への影響を絶対避けるという「背水の陣」の決断があった。変異株の脅威を目の当たりにした大阪府は飲食店の完全休業などを要求。首相は経済的打撃への懸念との間で揺れた。舞台裏を検証した。[br][br] ▽予想外[br] 「人流を止めろというが、どうすればいいのか」。大阪府が宣言要請へかじを切った今週前半、首相は周囲にこううめいた。4月15日から18日までの米国訪問中、大阪の感染状況を日本国内の秘書官に問い合わせ続けた首相。「細心の注意」(政府関係者)を払っていたが、吉村洋文知事の急な動きは予想外だった。[br][br] 吉村氏の危機感は強かった。府の感染者が過去最多の1219人となった18日、西村康稔経済再生担当相と電話で会談。翌19日から、宣言を巡る事務方の水面下協議がスタートした。「要請が早すぎる。まん延防止等重点措置の効果を見極めるべきだ」。驚く政府の担当者に対し、府側は「重症病床の逼迫(ひっぱく)がまずい」と窮状を訴えた。[br][br] ▽生命線[br] 政権内では「吉村氏はパフォーマンスがうまいから」(政府筋)と冷ややかな受け止めも少なくなかったが、首相にも切迫した事情があった。5月17、18両日に控える国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の来日だ。「最悪のシナリオ」(自民党関係者)は、大型連休中に強い措置を取らず東京都内で感染が爆発し、来日に支障を来す事態だった。[br][br] 宣言を出すにしても期間については配慮が必要だった。自民筋は20日、小池百合子都知事に「バッハ氏の日程に重ならないようにしてほしい」と要求。小池氏も同調した。こうした自民側の意向は官邸に伝えられた。[br][br] 官邸幹部は「五輪は政権の生命線だ。開催に水を差すことはあってはならない」と、政権の立場を代弁する。[br][br] 五輪優先の「短期決戦」への調整は、気脈を通じる「首相―松井一郎大阪市長」のパイプでも進んだ。両氏は「2週間程度なら、発令はやむを得ない」(首相周辺)との認識で一致した。[br][br] 吉村氏は酒類提供停止を求める案などを示して発信を強め始めていた。7月に東京都議選を控える小池氏も宣言要請の意向を固め、東西大都市の知事が「そろい踏み」。政権としても調整を急がねばならなかった。[br][br] ▽浮沈懸け[br] 首相の脳裏をよぎったのは、休業要請の網を広げた場合の景気への悪影響だった。「経済が相当きつくなる」。こう不安を口にした。[br][br] 飲食店の完全休業などを含む3案を提示していた大阪府。東京都は「高いボールだ」と戸惑いつつも、酒類提供禁止は欠かせないと考えていた。官邸筋は「短期間で感染を抑えるには、飲食店の営業時間短縮を中心にした前回宣言より強力なものにするしかない」と、首相の思いを明かした。[br][br] 対策を巡る駆け引きは22日まで続いた。都関係者によると、政府側と合意したのは、最終的に都が最初に示した内容に近かったという。[br][br] 25日から政権の浮沈を懸けた17日間に突入する。政府の基本的対処方針分科会メンバーである日本医師会の釜萢敏常任理事は感染者数を巡りこう警告した。[br][br] 「(約半月の宣言期間で)そんなに急には下がらないと思う」 緊急事態宣言を巡る首相らの発言と五輪関連日程(似顔 本間康司)