【米黒人暴行死事件】差別病巣「氷山の一角」 警察不信消えず

 米国で警察官に射殺された人の人種別割合
 米国で警察官に射殺された人の人種別割合
米中西部ミネソタ州ミネアポリスで昨年5月に起きた黒人男性暴行死事件は、米国を長年むしばむ人種差別という病巣を浮き彫りにした。「氷山の一角だ」「事件が撮影されていなければ、どうなっていたか」。黒人を狙ったかのような警察の取り締まりに市民の不信.....
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 米中西部ミネソタ州ミネアポリスで昨年5月に起きた黒人男性暴行死事件は、米国を長年むしばむ人種差別という病巣を浮き彫りにした。「氷山の一角だ」「事件が撮影されていなければ、どうなっていたか」。黒人を狙ったかのような警察の取り締まりに市民の不信感は消えない。全米各自治体は警察改革に本腰を入れ始めたが、悲劇は今なお繰り返されている。[br][br] ▽強大な権限[br] 「9分29秒間にわたり、首を膝で押さえ付け続けた」。黒人男性ジョージ・フロイドさん=当時(46)=を死亡させたとして殺人などの罪に問われた白人の元警官デレク・ショービン被告(45)の公判で19日、検察側は「これは警察活動ではない。殺人だ」と糾弾、黒人市民の声を代弁した。[br][br] 事件を機に人種差別解消を訴える「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事だ)」運動が席巻した理由は警察権力への不満が大きい。ワシントン・ポスト紙によると2015年以降、職務中の警官に射殺された人は5千人以上。黒人は100万人当たり36人が射殺された計算で、白人の比率の2・4倍だ。[br][br] 公共ラジオ(NPR)によると、過去5年間で非武装の黒人を殺害した警官のうち殺人罪で訴追されたのは13人、有罪となったのは2人で、80件以上は訴追もされていない。警官に認められた強大な実力行使の権限が背景にあるとみられる。[br][br] 中西部オハイオ州のボウリンググリーン州立大のスティンソン教授(刑事司法)は「法廷は生死を分かつ現場で警官が下す瞬時の決断を結果論で批判するのを嫌う」と指摘。そのため、職務中に発砲した警官を訴追するのは難しいと説明する。[br][br] ▽全てに差別[br] 事件を受け、各自治体は重い腰を上げた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、事件後に30州以上で、警察改革に関する140以上の法律が可決された。警官による実力行使の制限や透明性確保を狙った法律が多い。[br][br] ただミネアポリス近郊では11日、白人警官(事件後に辞職)が逮捕しようとした黒人男性(20)を射殺。中西部シカゴでは警官が中南米系少年(13)を射殺した際の動画が15日に公開され、抗議の声が噴出している。[br][br] 「事件は氷山の一角。住宅、教育、刑事司法、雇用、医療、全ての制度に人種差別がある」。20日、フロイドさん暴行死事件の現場で黒人女性サマンサ・サンドラさん(55)は訴えた。「フロイドさんもその祖先も人種差別という膝で押さえ付けられていた。(20日の)有罪評決は、社会を変える始まりにすぎない」(ミネアポリス共同) 米国で警察官に射殺された人の人種別割合