時評(4月22日)

米国がアフガニスタンから駐留軍を完全撤退させることになった。バイデン米大統領は「永遠に続く戦争を終わらせる時だ」と宣言した。だが、米国の介入に終止符が打たれても、アフガンの内戦と悲惨な状況は残されたままだろう。一方的に介入し、混乱を残したま.....
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 米国がアフガニスタンから駐留軍を完全撤退させることになった。バイデン米大統領は「永遠に続く戦争を終わらせる時だ」と宣言した。だが、米国の介入に終止符が打たれても、アフガンの内戦と悲惨な状況は残されたままだろう。一方的に介入し、混乱を残したまま撤退するのは「大国の身勝手」だ。[br][br] バイデン氏には撤退の期限までに内戦終結に全力を挙げ、撤退後も和平達成まで外交努力を放棄しないよう求めたい。[br][br] 米国はアフガンに拠点を置いていた国際テロ組織アルカイダが2001年、米中枢同時テロ「9・11」を起こした報復として同国に侵攻、イスラム原理主義政権タリバンを打倒し、親米政権を樹立した。だが、タリバンとの戦争は長期化し、介入を余儀なくされてきた。[br][br] この間、米国は2兆ドル(約200兆円)の戦費を投入、米兵2200人以上が犠牲になった。しかし、軍事的勝利はおろか、国土の半分以上をタリバンに支配されているのが現実だ。[br][br] 紛争の泥沼から抜け出す道筋を付けたのは「米国第一主義」を掲げたトランプ前政権だ。昨年、タリバンとの間で今年5月1日までに駐留軍を撤退させることで合意した。[br][br] バイデン氏は基本的にこの路線を踏襲、撤退期限を9月11日までに先送りした一方で、戦況や和平交渉の進展にかかわらず約2500人の部隊を完全撤退させることを決定した。[br][br] 同氏は元々、「撤退論者」であることに加え、早急に紛争の足かせを外し、中国の脅威に対処しなければならないという危機感が強い。アフガンはもはや米国にとって優先課題ではないというわけだ。[br][br] だが、この「無条件」撤退の意味は深刻だ。撤退すれば、アフガン政府が崩壊する恐れがあるからだ。野党の米共和党は「選挙で選ばれた政府への裏切り」と批判、アフガン国民から「見捨てるのか」との声も上がっている。[br][br] 米国は後先をよく考えずに介入し、都合が悪くなると見限って一方的に手を引く、という過ちを繰り返してきた。ベトナム戦争やイラク戦争への介入が好例だろう。イラクでは不安定な治安情勢を放置したまま撤退し、過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭を招いた。[br][br] アフガンで同じ失敗を繰り返してはならない。米国は同じく派兵していた北大西洋条約機構(NATO)諸国や日本などの同盟国とも協力し、アフガンの和平協議を強力に支援する取り組みに全力を挙げるべきだ。