天鐘(4月22日)

昔、仕事でお会いした方から裏側に5円玉を貼り付けた名刺を頂戴したことがある。「何ですか」と尋ねると、「良いゴエンでありますように」。その時の硬貨は今も大切に取ってある▼ある材木店の社長は薄い木製、カレンダーの裏を使った“エコ派”の市役所職員.....
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 昔、仕事でお会いした方から裏側に5円玉を貼り付けた名刺を頂戴したことがある。「何ですか」と尋ねると、「良いゴエンでありますように」。その時の硬貨は今も大切に取ってある▼ある材木店の社長は薄い木製、カレンダーの裏を使った“エコ派”の市役所職員もいた。初対面の人へのあいさつ。自分のことを覚えてもらおうと、名刺に凝らす工夫もさまざまだ▼年度が改まり、職場や学校で「はじめまして」「よろしく」の言葉が交わされるシーズンである。この春、緊張しながら初めて名刺を交換したという新入社員もいることだろう。けれども今年は、いつもと少し事情が違っている▼ご承知の通り、コロナで互いにマスクが外せない。あいさつはしても、相手の表情が読み取れない。筆者も先日経験したが、やはりどこかもどかしい。次に素顔を拝見して本人と分かるかどうかは正直、自信がない▼竹内一郎さんの著書『人は見た目が9割』によると、コミュニケーションで言葉が果たす役割は1割足らず。表情やしぐさが大切だそうだ。ならば、第一印象の笑顔は侮れない。顔半分だけでは足りるまい▼〈いつだろう同期の素顔見れるのは〉。そんな句がサラリーマン川柳にあった。初めて会ったら、ほんの一瞬だけでもマスクを取って、無言でにっこり笑いかける―それくらいも許されまいか。何とも悩ましい出会いの季節である。