五輪へ続く厚底席巻 抜群の効果、専門家指摘

 2月末のびわ湖毎日マラソンで自己記録を更新した川内優輝=大津市皇子山陸上競技場
 2月末のびわ湖毎日マラソンで自己記録を更新した川内優輝=大津市皇子山陸上競技場
陸上長距離界の“厚底シューズ”の席巻は、とどまるところを知らない。今夏の東京五輪に向けた製品開発競争は熱を帯び、抜群の効果は専門家も認める。自らの記録の伸び具合に驚きや戸惑いを隠さない選手もいるほどだ。 ▽時速1キロアップ 環太平洋大の吉岡.....
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 陸上長距離界の“厚底シューズ”の席巻は、とどまるところを知らない。今夏の東京五輪に向けた製品開発競争は熱を帯び、抜群の効果は専門家も認める。自らの記録の伸び具合に驚きや戸惑いを隠さない選手もいるほどだ。[br][br] ▽時速1キロアップ[br] 環太平洋大の吉岡利貢教授(体育科学)はこの冬、板バネの役割を果たすプレートを埋めた厚底シューズの効果を数値化する実験を実施。その場で5度連続ジャンプした被験者5人中4人が薄底より高く跳べ、うち2人は平均6センチ以上も上回った。弾む力が増し、走行時のエネルギー効率も良化。マラソンでは時速1キロほどペースが上がり、2時間13分台の選手が6分以上も速く走れる計算になるという。[br][br] 吉岡教授は「まるで別人になる」と、厚底による記録を従来のものと同列に扱うことに抵抗もある。急激な用具の進化を「割り切ってこういう時代が来たと思わないといけない。竹で棒高跳びをしていた時代があったように」と表現した。[br][br] ▽大ベテランが進化[br] スポーツ用品大手のアシックスは3月、「ストライド型」「ピッチ型」に応じた2種の厚底モデルを発表。ランナーの選択肢を広げる手法で、市場を牛耳る“元祖”のナイキに挑む。アシックスの広田康人社長は「まだまだ挑戦者の立場」と強調し「ランニング(市場)ではナンバーワンになると強くうたっている」と野心をにじませた。[br][br] かつては軽さを追求した薄底が主流で、男子マラソンの川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)も薄底派だった。しかし昨年12月の福岡国際で振るわず「何か変えないと」と翻意。アシックスの試作品を2カ月ほど履き慣らして臨んだ今年2月末のびわ湖毎日で、33歳にして8年ぶりに自己記録を更新した。[br][br] 2019年春に公務員からプロに転じたものの、記録は頭打ち。靴を替えたレースで2時間7分台に達し「フォームが良くなり、呼吸も楽になった。復活どころか進化できた」とその効果に感じ入った。[br][br] ▽「自分でも動揺」[br] 各社が開発を競い、ナイキも人気モデルに改良を重ねる。びわ湖毎日では2時間4分56秒の日本新記録を樹立した鈴木健吾(富士通)ら5位までが日本歴代10傑入りした。5人とも足元はナイキ。前回大会から20分以上も縮めた3位の細谷恭平(黒崎播磨)は「自分でも動揺している」と戸惑いさえのぞかせた。[br][br] 注目される五輪でも、厚底シューズを履くアフリカ勢など強豪が、強さと靴の威力を改めて見せつける可能性は高い。学生選手を指導する立場でもある吉岡教授は「履いただけで求める動きができてしまう。本当に成長しているかが分からない」と、大きすぎる道具の効果に複雑な表情を見せた。 2月末のびわ湖毎日マラソンで自己記録を更新した川内優輝=大津市皇子山陸上競技場