時評(4月21日)

東芝は英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズから買収の検討を中断するとの書面を受け取ったと発表した。CVCは買収提案を事実上撤回したとみられ、社長交代にまで発展した今回の混迷は、ひとまずは収束に向かう公算になった。しかし、今回の問題.....
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 東芝は英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズから買収の検討を中断するとの書面を受け取ったと発表した。CVCは買収提案を事実上撤回したとみられ、社長交代にまで発展した今回の混迷は、ひとまずは収束に向かう公算になった。しかし、今回の問題は東芝の統治能力の深刻な劣化を鮮明にすると同時に上場企業と株主の関係についても再考を突き付けたと言えるだろう。[br][br] 東芝の株主は経営戦略などを巡り経営陣と激しく対立、前社長の車谷暢昭氏は窮地に陥っていた。昨年の定時株主総会では再任議案の賛成が57%台にとどまり、今年6月の総会での再任が危ぶまれる状況だった。[br][br] そんな苦境が続いていた中で、買収提案を打ち出したのが、車谷氏が日本法人の会長を務めていたCVCだった。初期提案は、提案時点の東芝の株価に3割程度上乗せした額で株式の公開買い付け(TOB)を行い、いったん上場廃止にし、企業価値を高めて約3年後をめどに再上場するという案だ。[br][br] 経営に細かく注文を付けてくる「物言う株主」対策に苦慮していた車谷氏にとって、CVCが安定した株主になってくれれば、当面は経営戦略の自由度が増す。こんな見方が社内外、市場で広がり、東芝経営陣には車谷氏への疑心暗鬼が生まれた。[br][br] 辞任した同氏の後任として綱川智会長が社長を兼務するが、これは暫定体制でしかないだろう。問題が落ち着いた段階で、経営改革を主導する経営能力を持ち、株主との関係の再考についてもリーダーシップを発揮できる指導者が必要だ。状況によっては社外からの起用も選択肢になるかもしれない。[br][br] 東芝は2015年に不正会計が発覚、その翌年に米国の原子力発電事業で巨額の損失が発生したことで経営危機に陥り、債務超過に陥った。上場廃止回避のため医療機器部門など事業を相次いで売却するとともに、海外投資家などから約6千億円の増資を募って財務内容を改善した。このときの増資が「物言う株主」を招いた経緯だ。[br][br] 東芝に対する国外からの買収提案は排除されたわけではない。今後も可能性はある。原発など国家機密に関する事業を手掛けているため、政府も神経をとがらせざるを得ない。改正外為法は、国の安全保障に関わる国内企業の株式を外国投資家が1%以上保有する際は事前届け出を求めている。今回の買収騒動は「経済安全保障」という課題への対策も急務であることを示した。